トランプ氏: ロシアがウクライナに侵攻した理由

引き続き、今年11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ氏の、All-In Podcastによるインタビューである。

今回はロシアによるウクライナ侵攻について議論している箇所を取り上げたい。

大統領選挙とウクライナ情勢

2022年2月、ロシアはウクライナに侵攻した。その後戦争はもう2年以上続いている。

アメリカはこの間ウクライナにあらゆる支援を行なっている。ただ、アメリカでも野党共和党の支持者はウクライナ支援に消極的であり、共和党の反対でウクライナを支援する予算が長らく米国議会を通らなかったことがある。

さて、共和党の候補として大統領選挙に出馬するトランプ氏はロシア・ウクライナ戦争についてどう考えているのか。

ロシア・ウクライナ戦争の原因

トランプ氏は次のように述べている。

わたしが大統領だったら絶対に起こらなかったことだ。

これはトランプ氏が長らく主張し続けていることである。

何故そう言えるのか。トランプ氏は次のように続けている。

この戦争が起こったことには2つ理由がある。1つは原油価格が上がったからだ。だからプーチン氏は戦争をする資金を得た。

原油価格はもっと低かった。ロシアには戦争をする資金などなかった。だが原油価格がほとんど100ドルまで上がった。

これは、以下の記事で説明したがトランプ氏がバイデン大統領の脱炭素政策を原油価格上昇の原因として批判していたことに関連している。

バイデン氏は脱炭素政策のために国内の原油生産に制限をかけている。それは当然原油価格を高騰させる政策である。

トランプ氏はそれがロシアに経済的な力を与えたと主張している。脱炭素政策からアメリカ国内の産油企業を解放することはトランプ氏の公約の1つである。

しかも戦争自体が原油価格を更に上げてしまった。トランプ氏は次のように続ける。

戦争中に経済的利益を得られたのはロシアだけだ。原油価格が上がったからだ。しかも原油価格はいまだに高いままだ。

バイデン政権は日本やヨーロッパなどを巻き込んでロシアのエネルギー資源の禁輸を行なったが、このニュースが原油価格を更に上げてしまった一方で、この禁輸は迂回されている。

結果として対露制裁は単にエネルギーを輸入出来なくなったヨーロッパや日本などを苦しめる結果となっている。

NATOとロシア・ウクライナ戦争

そしてトランプ氏が持ち出す戦争のもう1つの理由がNATOである。

トランプ氏は次のように述べている。

ロシアにとってウクライナのNATO加入が脅威になるということはもう20年も聞き知った話だ。

そしてそれこそがこの戦争が起こった理由だ。

バイデン氏は間違ったすべてのことを言っている。その内の1つはウクライナがNATOに加盟すると言ったことだ。

それを聞いた時、バイデン氏は戦争でも始めるつもりかと思った。

NATOはロシアを仮想敵国とする軍事同盟である。アメリカがその軍事同盟をどんどん東側に拡張し、ついにはロシア国境沿いのウクライナまでNATOに加入させようとしたことが戦争の原因だとトランプ氏は主張しているのである。

わたしが大統領だった4年間にはロシアがウクライナを攻めるなどという話はなかった。そんなことは起こらなかった。ロシアはウクライナを攻めようとはしなかった。

だがわたしがいなくなってすぐにロシアは国境に並び始めた。

プーチン氏は交渉を有利に進めるためにそうしたのだと思った。だが彼は実際に攻撃をしてしまった。何が起こっているのかと思った。

トランプ氏の任期とウクライナ

興味深いのは、ロシアとウクライナの紛争は確かにトランプ氏の任期4年間だけ一時停止しているということである。

ロシアがクリミアを併合したのは2014年であり、この時のアメリカ大統領は民主党のオバマ氏である。そして2016年から2020年までがトランプ氏の任期であり、ロシアのウクライナ侵攻は2022年である。

だがこれは偶然ではない。2014年のクリミア併合は、ロシア側の理屈ではウクライナの当時の親露政権をアメリカとEUが支援した暴力デモ隊が追放したマイダン革命に対する結果として起こった。

「民主的」なはずの欧米が暴力デモ隊による政権転覆を支援する正当な理由はないはずなのだが、これはロシアのプロパガンダではなく、実際にアメリカの外交官ビクトリア・ヌーランド氏がマイダン革命の後に親米派の政治家をウクライナのトップに据えようとしている音声がYoutubeに暴露されている。

ちなみにこのヌーランド氏はトランプ政権では排除されたものの、その後のバイデン政権で国務次官に任命されている。読者も自分で調べてみると良い。

そして2022年のウクライナ侵攻については、トランプ氏はアメリカのブリンケン国務長官がロシアのラブロフ外相に対し、ウクライナをNATOに加入させるだけでなくアメリカがウクライナに核兵器を置く話をしたことを挙げ、次のように述べている。

ロシアの大統領なら不快に思うのが当たり前だろう。そんなことはずっと話題にさえ上がらなかった。ウクライナはロシアの国境沿いなのだ。

実際、マイダン革命以降親米となったウクライナ政府の大統領であるゼレンスキー氏は、ウクライナ侵攻の数日前にミュンヘン会議で核兵器の保有を仄めかした。これは日本のメディアではほとんど報じられていないが、筆者はウクライナ戦争の直接の原因だと考えている。

結論

日本の報道に慣れている人には知らされていない話が多いかもしれないが、こうした見方はアメリカの共和党支持者には十分に広がりつつある。報道を鵜呑みにせず自分で調べることが必要である。

トランプ氏は次のように述べている。

バイデン氏の態度を見ると、彼はわたしが言うべきだと考えることの真逆を言っている。

しかも未だにそれを続けている。彼の言っていることは狂っている。

また、フランスのマクロン大統領が欧米の軍隊をウクライナに派兵する考えを示したことについて、トランプ氏は次のように言っている。

フランスがウクライナで闘いたい? そうか。頑張れ。