レイ・ダリオ氏、集中投資より分散投資が優れている理由を語る

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の、The Prof G Showによるインタビューである。今回は分散投資と集中投資について語っている部分を紹介したい。

投資の鉄則

投資は難しい問題である。投資に回せる資金があって、一体何を買うのか。株式なのか、債券なのか、ゴールドなどの貴金属なのか? 盲目的に株式を買う人は多いが、それは本当は難しい問題なのである。

ヘッジファンドとしては世界最大の資金を運用するダリオ氏はどのようにポートフォリオを決めているのか。

これは以前も紹介したダリオ氏の投資原則だが、ダリオ氏は自分の投資方針を次のように説明している。

投資における黄金則は、互いに相関しない10個から15個の優れたリターンの源泉を見つけることだ。

分散投資の魔法

ダリオ氏の投資の秘伝は分散投資である。だがそれは一般に言われるような分散投資ではない。単に多くの銘柄を保有するのではなく、保有する銘柄が「互いに相関しない」ことが何より重要なのである。

例えば株式銘柄を複数保有しても、それらは基本的に株式市場全体と相関する。市場全体が上がれば上がり、市場全体が下がれば下がる。

だがヘッジファンドマネージャーは保有する1つの銘柄が下落するとき、他の銘柄まで連動して下がってしまうことを嫌う。

例えば株式の買い持ちしかしないウォーレン・バフェット氏はリーマンショックで資産を減らしているが、ダリオ氏やジョン・ポールソン氏などのヘッジファンドマネージャーは2008年に大きな利益を上げている。

また、スタンレー・ドラッケンミラー氏は何十年ものキャリアで資産が減少した年が1年もないことで知られる。

株式だけのポートフォリオのように、一定間隔で30%や40%も下落する年のあるポートフォリオにせずに、毎年コンスタントにリターンを上げ続けること。それがヘッジファンドの仕事である。

投資の黄金則

ダリオ氏がポートフォリオ内の銘柄が互いに相関しないようにするのはそれが目的である。1つの銘柄が下がっても別の銘柄が上がっていれば、ポートフォリオ全体ではリターンは安定している。

ダリオ氏は次のように説明している。

複数の銘柄を保有している場合、リターンはそれらの平均になる。

本当に気に入った、互いに相関しない優れた銘柄を選べば良いからリターンは減らない。だが一方でリスクの80%を消すことができる。

つまり、このやり方ならあなたのリスク調整後リターンは5倍になる。

普通、投資の世界ではリスクを増加させずにリターンを増やすことはできない。だが(ダリオ氏の意味での)分散投資は別である。

投資の世界では、リスクを5分の1にしたというのはリターンを5倍にしたことと同じである。単純にレバレッジを5倍にするだけでも元々と同じリスクでリターンが5倍になるからである。

ここにダリオ氏が優れた銘柄への集中投資より分散投資を推奨する理由がある。ダリオ氏は次のように述べている。

銘柄選びを工夫してリターンを5倍にすることはできない。大きく成長する銘柄を選ぶゲームは競争が激しいからだ。

リスクとリターンを考えたとき、リターンを5倍にするよりリスクを5分の1にする方が易しい。だが投資の世界ではどちらも同じ効果を生むからである。

結論

ダリオ氏は分散投資の天才である。それは一般に言われるような株式銘柄の分散ではなく、各銘柄の相関性を丁寧に分析するファンドマネージャーの緻密な技術である。

だが一方でドラッケンミラー氏のように集中投資を推奨する投資家もいる。興味深いことに、損失を出した年が1年もないという偉業をやってのけたのは、分散投資のダリオ氏ではなく集中投資のドラッケンミラー氏の方なのである。