引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の、The Prof G Showによるインタビューである。
日本の債務問題
前回の記事でダリオ氏は先進国の債務問題に警鐘を鳴らしていた。コロナ後の金利上昇で莫大な政府債務に巨額の利払いが生じ始めているからである。
ダリオ氏はその結果起こることは国債の下落と通貨安だと予想していた。
今回はその続きだが、こうした問題でいつも話題に登るのは読者もご存知のあの国である。ダリオ氏は次のように述べている。
日本は最悪だ。日本では大量の紙幣印刷が行われ、結果として日本円は下落した。
日本国債の保有者は自分の資産の購買力を8割方失ったことになる。
これはアベノミクス以来の円安に金利上昇による長期国債の価格下落を足した計算なのだと思う。日本円で物事を考えない海外の投資家から見れば、日本の資産は今そういう状況にあるわけである。
国債下落と通貨安はアメリカではこれからの問題だが、日本ではそれは既に起きている。
アメリカの債務問題
さて、日本では既に起こっている問題だが、アメリカではこれからの問題である。
ダリオ氏は次のように続けている。
アメリカでも債務が支出を圧迫してゆくだろう。国債に対する政府の利払いが増加しているからだ。しかも借金自体も増えている。
そうして政府には支出の余地がなくなってゆく。金額が決まっている年金の支払いと歳入との差が縮まっている。
だがダリオ氏によれば国債利払いの増加そのものは経済危機ではなく、アメリカ経済の緩やかな減速をもたらす。ダリオ氏はこれを早くも去年11月から予想しており、現在までその予想は当たっている。
債務問題から債務危機へ
しかし米国政府は国債利払いのために国債を発行しているため、国債の発行量はねずみ算式に増えてゆく。
年金の支払いの問題についてはジェフリー・ガンドラック氏はあと4年だと計算している。
だからこの問題は遠からず臨界点に到達する。
ダリオ氏は次のように述べている。
だが本当の問題は国債が本格的に売られ始めた時だ。
赤信号が灯るのは、Fedや他の中央銀行が量的緩和を再開する時だろう。
次に景気後退になるタイミングが一番リスクが高い時期ということになる。
結論
それはいつなのか。ダリオ氏は次のように見積もっている。
もっとも可能性が高いのは今後5年以内か、それくらいだろう。
今の相場では、争点が徐々に11月の大統領選挙に移りつつある。
アメリカ経済は減速しているが、新大統領がそれをそのままにするとは考えづらいから、少なくとも筆者の中では当面の景気後退シナリオは消えつつある。
ダリオ氏は5年と言っているから、今年や来年には景気後退は起きず、新大統領がもたらすインフレ相場が次に落ち着いたくらいのタイミングを考えているということだろう。
一方で、新大統領がもたらす国債の大量発行が国債暴落の直接のトリガーになると考えている著名投資家もいる。ポール・チューダー・ジョーンズ氏である。
いずれにしても米国債の危機を予想する機関投資家が増えている。それは今年だろうか、5年後だろうか。
いずれにしても政治家が何十年も行なってきた財政出動のツケを国民が払うタイミングが近づいているということである。