世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がThe Prof G Showのインタビューでアメリカの債務問題について語っている。
アメリカの債務問題
今年に入って多くの著名投資家が米国の政府債務を懸念している。
米国の政府債務はGDPの122%であり、コロナ後の金利上昇によってその莫大な借金に巨額の利払いが発生しているからである。
米国政府の利払い費用(GDP比)は以下のように推移している。
だが米国政府にはお金がない。だから米国政府は国債の利払いのために国債を発行している。
国債の需給問題
アメリカの財政赤字はコロナ禍を過ぎても高い水準で推移しており、新たに発行される国債の量の増加は、国債市場において需給を圧迫し、国債にとって価格下落圧力として働く。
多くの機関投資家はそれを懸念しているのである。だがダリオ氏は問題はそれだけではないという。ダリオ氏は次のように述べている。
国債の保有者は、国債から十分なリターンが得られなくなれば国債を売るだろう。
だから新たな国債がどれだけ刷られるかという問題だけではなく、既に発行されていて今後売られる可能性のある国債がどれだけ積み上がっているかも問題であり、それが国債の需給を大きく偏らせてしまう。
このメカニズムによって国債の金利はなかなか下がらなくなる。下がりすぎれば魅力がなくなって投資家に売られてしまうからである。
デフレの時代ならそれでも国債を買うしかない機関投資家は大勢居ただろうが、インフレの時代なら他に値上がりする資産がいくらでもある。
実際、各国の中央銀行は米国債よりもゴールドの保有量を増やしている。
米国債が売られる瞬間
アメリカのインフレ率は今のところピークから下がっている。
だがインフレが再発すれば、国債から現物資産への資金逃避はまた始まるだろう。ダリオ氏は次のように続ける。
そうして国債が大きく売られるとき、中央銀行が介入してきて、自分は紙幣を印刷して借金を返すことで政府を救えると考える。いわゆるマネタイゼーションだ。
だがそれによって貨幣価値は失われるだろう。
それはいつになるだろうか。今年の大統領選挙がそのきっかけになるという声も高まっている。
結論
ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説している通り、歴史上の大国はいつも政府債務の膨張から紙幣印刷に至り、最後にインフレと通貨下落を引き起こして滅びていった。
日本ではそれは既に起こりつつある。アベノミクス以来自民党が行なってきた円安政策はドル円レートを見事に円安にして日本国民に地獄、外国人観光客に天国の状況を作り出している。
政府債務をどれだけ増やしても何の問題もないと主張してきたMMT(現代貨幣理論)論者に対してダリオ氏は次のように述べている。
本当に政府債務には何の問題もなく、いくらでも借金を続けられるなら素晴らしいことだろう。だが借金は返済されなければならない。
それはインフレが発生し金利が上がるところから始まる。だがインフレ政策がインフレをもたらすのは当たり前の結果ではないのか。
そして政府債務は増税かインフレによって何の問題もなく返済されるだろう。ただ、「政治家にとって」何の問題もなく返済されるのであって、犠牲になるのは国民の所得と資産である。
世界秩序の変化に対処するための原則