引き続き、ジョージ・ソロス氏とともにクォンタムファンドを設立したジム・ロジャーズ氏のフォン・グライアーツ氏によるインタビューだが、今回もフォン・グライアーツ氏のコメントに注目しながら報じたい。
貨幣は長期的に価値を失ってゆく
以前の記事でフォン・グライアーツ氏は、貴金属の含有率を減らされたローマ帝国の硬貨から始まり、すべての通貨は政府によって価値を減らされてきたという歴史的事実について語っていた。
そして実際、ドルの価値も1975年を100としてインフレによる価値下落を計算するとドルの価値はそれから87%下落しているというグラフを示しておいた。
通貨の価値が下落する理由
誰もが財布に入れている通貨の価値が長期的に下落するのは、それが莫大な政府債務を解決するための有効な方法だからである。
金利が上がったアメリカでは莫大な政府債務に利払いが付き始めており、インフレによる債務の無効化のほかにも投資家たちは債務の解決方法について議論している。
少なくともインフレを起こしてしまえば、国民の貯金と同時に政府の借金も紙切れ同然となる。だから通貨は政府のインフレ政策によって長期的に価値を失ってゆくのである。
通貨の価値下落とゴールド
この状況をフォン・グライアーツ氏はどう見ているのか。彼は次のように述べている。
政府はいつもあなたの味方だ。政府は貨幣価値を台無しにするために日夜勤勉に働き、ゴールドの安定した購買力を維持してくれている。
政府はゴールドに興味のある投資家にとって最高のパートナーだ。
すべての通貨はいずれなくなるが、ゴールドだけは生き残る。これほど安全な賭けがあるだろうか。
これは勿論皮肉である。だが実際に、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏は政府債務への不信感から貴金属が上昇していると言っている。
ゴールドかシルバーか
ではゴールドとシルバーではどちらの方が良いのか。これに関してはロジャーズ氏が次のように言っている。
ゴールドもシルバーも保有しているが、どちらかを今買うとすればシルバーを選びたい。シルバーの方が安いからだ。
これに関してはもう一度ゴールドとシルバーの長期チャートを持ち出すべきだろう。金価格の長期チャートは次のようになっている。
ほぼ史上最高値付近である。
銀価格の長期チャートは次のようになっている。
最近少し上がったが、以前のバブルの高値よりも大幅に低い水準で取引されている。
だが1970年代の物価高騰時代にはゴールドもシルバーも同じくらい上昇(ゴールドは25倍、シルバーは27倍)したということを以下の記事で解説しておいた。
貴金属市場の動向予想
フォン・グライアーツ氏もシルバーの割安性を認めているらしい。彼は次のように述べている。
経済は紙幣印刷と債務増加が過熱する段階に来ている。だから金相場と、銀相場はもっとそうだが、加速する段階に来ている。
この予想には短期的には異論もあるだろう。景気後退が来れば貴金属であっても下落する。以下の記事で解説している通り、リーマンショックでは実際、金相場は一時的に下がっている。
だがその後、景気後退に対応するために政府が緩和を再開し、それでインフレ相場が戻ってくると予想する著名投資家は多い。
インフレ再燃のタイミングで真っ先に上がるのは貴金属だろう。フォン・グライアーツ氏は次のように予想している。
ゴールドとシルバーの本当の上げ相場はこれからだ。そして恐らくそれは遠い未来の話ではない。