ガンドラック氏: 政府の勝手な振る舞いが原因でゴールドとビットコインが上がっている

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の自社配信動画でのインタビューである。

今回はゴールドなどのコモディティ市場やビットコインなどについて語っている部分を紹介したい。

ガンドラック氏のコモディティ推し

前回の記事では、ガンドラック氏は株式より債券を推していた。

だが債券の値上がりを予想しているというよりは、短期債などリスクを取らずに高金利を得られるものを推奨していた。

だがゴールドなどコモディティ銘柄についてはもう少し積極的に推しているようだ。ガンドラック氏は次のように述べている。

ここ数週間か1ヶ月ほどコモディティに興味を持ち始めている。

コモディティ市場では相場の勢いが大事で、200日移動平均線を下回る下落が続いている時にはコモディティには手を出さない方が良い。その状況が2年続いていた。

だがそれも変わりつつある。コモディティ市場は強くなってきている。

金相場は次のように推移している。

筆者もプラチナなどの貴金属を推しているが、貴金属はここ最近好調である。

貴金属が好調な理由

コモディティ、特に貴金属は金利に反応しがちである。しかしここ数ヶ月で金利が下がったわけでもないのに貴金属はなぜ上がっているのか?

ガンドラック氏が理由に挙げるのはアメリカの債務問題など先進国の財政問題である。アメリカでは金利高騰のために政府の国債利払いが急増しており、米国政府は借金の利払いのために借金をしなければならない状況にある。

ガンドラック氏は貴金属の上昇についてこう述べている。

先進国の政府が無茶苦茶をやっていることに人々が気付きつつあるのではないか。

終わりが見えない債務の問題の重大さに普通の人が気付き始めているように思う。何か現物の資産になるものを持っておいた方が良いと思っているのではないか。

ビットコインが年始から大きく上がっていることも偶然ではないと思う。ゴールドもビットコインも同じ現象だろう。

政府の発行する紙幣への不信から生まれたビットコインがその役割を果たそうとしているのだろうか。ビットコイン相場は次のように推移している。

多くの人が何の問題もないと思い込んでいた政府による紙幣印刷は、歴史を振り返ればいつものことなのだが、結局インフレを引き起こした。

大英帝国など歴史上の大国がいずれは紙幣印刷に手を染め、インフレを引き起こして衰退してゆく様子は、レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で詳しく説明している。いつものことなのである。

政府の信用

人々は政府が好きなように刷り続ける紙幣が実はただの紙切れであるという衝撃の事実に徐々に気付き始めている。

紙幣とは元々は銀行に預けたゴールドの預かり証だった。だが1971年のニクソンショックにおいて、人々が預けたゴールドは返さないと政府が宣言して以来、その預かり証は正真正銘ただの紙切れになった。

だがインフレ政策が実はインフレを目指すものだったという衝撃の事実にアベノミクス以降たった10年で気付いた素晴らしい頭の回転を誇る一般の人々は、財布に大事に仕舞っている紙幣が実はただの紙切れであるというより難しい事実にもすぐに気付いてしまうだろう。ニクソンショックから50年ぐらいだろうか。

本来はゴールドが返ってこなくなった時点で気付いても良かったのだが、そうした政府の自己中心的な振る舞いは今に始まったものではなかった。

ガンドラック氏は次のように述べている。

1968年に人々は怒っていた。軍服を着てベトナムに行って人を殺すか殺されるかしてくることを強要されたからだ。彼らは強要された。

彼らは選挙権すらなかった。18歳で投票できなかった。にもかかわらずベトナムに送られた。

政府は何の権限があって自分の政治的動機のために人に死ねと言えるのだろうか。

犠牲になる若者

ガンドラック氏は特に若者が政府の振る舞いの犠牲になっているという。ガンドラック氏はコロナ禍においても若者が犠牲になったと主張する。

若者の重症化率は高くなかったにもかかわらず、老人たちのために本来10年ほど必要な開発期間を1年で終わらせたワクチンを強要されて高熱を出させられた上に、二度と返ってこない学生生活を無茶苦茶にされた。それを気にしないのは他人の犠牲なら何とも思わない大人たちだけである。彼らは子供たちにありがとうとも言わなかったではないか。

それでも政府は若者を犠牲にし続ける。ガンドラック氏は次のように述べている。

政府が65歳以上の人に「投資」する予算は、25歳以下の人に本当の意味で投資する予算に対してどれくらいか。15年前は7:1だった。今では更に悪くなっている。

こんな方法で国家を運用してはならない。未来があり、未来に対して権利を持っている人々に投資すべきだ。政府を動かしているヒッピーの末裔たちに投資している場合ではない。

結論

若者への酷い扱いについては同じく世界的なファンドマネージャーであるスタンレー・ドラッケンミラー氏も同じことを言っていた。

何故著名投資家たちは投資判断だけでなく政治についても同じことを言うのか。

それは彼らが権威におもねることなく実力で金を稼いだ世界で数少ない人種だからである。

政治家や、政治家のおこぼれを貰いながら富を築いた人々の意見が政治的になることは当然である。また、実力で金を稼いだ大富豪たちといえども、大企業の創業者であれば政府と何らかのやり取りはせざるを得ない。Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は元々はSNSの情報規制など馬鹿げたことだと言っていたが、政府に圧力を掛けられると手のひらを返さざるを得なくなった。

だがファンドマネージャーたちは大金を稼ぎながら政府による制約をほとんど受けない数少ない人々である。彼らは他人の金を預かっていること以外は純粋な投資家なのだから、自分の資産を運用しているだけの人々に政府が掛けられる制約は少ない。

また、自分で金を持っているので金銭的に自分に有利になる政治的意見を支持する必要もなく、ただ自分が正しいと思う主張を持つことができるのである。

だから彼らは自分が高齢者であるにもかかわらず若者が不当に扱われていることを声高に指摘できる。

お金があるのは良いことだ。お金に動かされずに自由な意見を持つことができるからだ。お金がなければ、自分よりも何十歳も若い若者から金を吸い上げるような政策をあれやこれや理由をつけて正当化するような年寄りにならなければならなかったかもしれない。

あるいは政府からお金が降ってくることを期待して腐った政治家に投票するような年寄りにならなければならなかったかもしれない。

そういう年寄りにならずに済んだのは、政府の補助金によらずに自分で十分な金を稼ぐだけの力を持ち合わせていたからだ。自立とは素晴らしいことだ。そうでなければ自分の人生が嫌なものになってしまう。


世界秩序の変化に対処するための原則