ドナルド・トランプ次期大統領が12月1日、オハイオ州シンシナティで当選後の感謝集会を開き、講演を行った。いくつか面白い発言が出ているので、ここで取り上げてみたい。その一つは表題の通りである。あのトランプ氏がこのようなことを言うなど信じられるだろうか?
女性の雇用機会
トランプ氏は激戦州のオハイオ州における勝利が当選に大きく貢献したことを受けて、支持者に対して感謝の言葉を述べた。
彼は退役軍人など様々な層に語りかけたが、その中に女性の支持者について述べた部分がある。
われわれの政権は女性の雇用機会を増加させるために戦うつもりだ。女性の起業家をサポートすべきだ。会場内で女性の起業家は? 沢山来ている。言いたくないが、男性諸君、一般論で言えば彼女らは君たちより優秀だ。
どうだろうか? メディアによれば女性蔑視者であるところのトランプ氏がこのような発言をするなど、メディアの偏向報道でのみ彼について聞いていた人々は想像もしなかったことだろう。一方で、トランプ氏はポリティカル・コレクトネスへの皮肉も忘れていない。
だが、もしわたしがその逆を言えば大騒ぎになる。そうだろう?
このバランス感覚こそが、トランプ氏の勝利の理由である。大手メディアから情報を得ている人々は、トランプ氏が当選後に急にまともになり始めたかのように思うかもしれないが、ここの記事を読んでいる読者はそうは思わないだろう。以前報じたことだが、選挙前に娘のイヴァンカ・トランプ氏が言っていたことを思い出したい。
あらゆる人種の人々が父の建設現場で働いていましたし、女性の活躍が一般的になるずっと前から、父のもとでは女性が働いていました。
父は肌の色で人を差別することなく、性別に対して中立(原文: He is colour-blind and gender-neutral)です。
このようにトランプ氏のイメージと一見矛盾した発言を評して、わたしはこう書いていた。
トランプ氏の選挙戦略が潜在的に恐ろしいのは、トランプ氏の過激な発言とイヴァンカ氏の宥和的発言が矛盾せずに両立してしまうことにある。
端的に言って、クリントン氏はトランプ氏に勝てないだろう。これまでのアメリカ大統領選を支配してきた従来の選挙戦略が完全に機能していない。民主党の既得権益層は欲をかいて、大衆に人気のバーニー・サンダース氏よりも利権重視のクリントン氏を選んだが、今回の選挙はまさにそれが論点であり、その選択を選んだ側が負けるように出来ているのである。
クリントン氏の敗北を受け、その裏で結託していた既得権益層は様々な謀略を巡らせているようである。イギリス人とアメリカ人は謀略に気付いたが、ほとんどの日本人はそうではない。引き続き注意深くありたいものである。