ドラッケンミラー氏が米国株大幅買い増し、インフレ再燃予想か

機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fが公開されている。

まずはジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオから紹介しよう。

ドラッケンミラー氏のポートフォリオ

ドラッケンミラー氏のこれまでのトレードはどんなものだったか。

ドラッケンミラー氏と言えばまずはNVIDIAだろう。AIの高度な計算に使われるGPUを製造するNVIDIAはAI銘柄の大本命であり、ドラッケンミラー氏がかなり早期に発掘し、そのままポートフォリオ中の最大ポジションとして保有し続けていた銘柄である。

NVIDIAの株価は次のように推移している。

とんでもなく上がっているNVIDIAだが、先月のインタビューでドラッケンミラー氏は購入時から6倍になったNVIDIAの株式を一部利益確定したと述べていた。

今回のForm 13Fは3月末のポジション開示だが、実際NVIDIAの買いは半分以上減らされて1.6億ドルに減額されている。

小型株指数の買い

ドラッケンミラー氏のNVIDIAに関する相場観については上記の記事を参照してほしいが、彼が米国株全体に対して弱気になったのかと言えば、そうではない。

何故ならば、Form 13Fに申告されているポートフォリオの総額は34億ドルから44億ドルに30%近く増額されているからである。

つまりドラッケンミラー氏は米国株を大幅に買い増したことになる。ではNVIDIAの代わりに最大ポジションとなった銘柄は何か。

今回最大ポジションとなったのは、米国の小型株指数であるRussell 2000のETFのコールオプションの買いである。4.7億ドル分の買いとなっている。

コールオプションは株価が上昇すれば利益の出る取引なので、ドラッケンミラー氏は小型株が上昇することに賭けているということになる。

Russell 2000のETFの株価は次のように推移している。

ドラッケンミラー氏は何故小型株を買い増したのか。分析は他の銘柄を紹介し終わってからにしたい。

Microsoftの買いは維持

さて、2番目に大きいポジションとなっているのはNVIDIAと同じくAI銘柄としてドラッケンミラー氏が長らく投資しているMicrosoftである。

MicrosoftはChatGPTを製作しているOpenAIに出資しており、NVIDIAと双璧をなすAI銘柄であると言える。NVIDIAほどではないが、去年から大きく上がっている。

株数は2%増で、ほぼ現状維持だと言える。NVIDIAほどは急激に上がらなかったから長期保有を継続しているのだろう。ポジションの規模は4.7億ドルである。

ようやく急騰したCoupang

最後に紹介する3番目に大きいポジションは、韓国のAmazon.comと呼ばれるCoupangである。ポジションの規模は4.0億ドルとなっている。

Coupangもまたドラッケンミラー氏は長らく保有している銘柄だが、長らく不遇なままだった。

しかしチャートを見れば今年の初めから上昇に転じている。

タイミング的には中国株が反発し始めた頃と重なるから、その影響だろうか。また、Coupangは2023年に黒字転換しており、それも理由だろう。

ドラッケンミラー氏が米国株を買い増した理由

さて、ではドラッケンミラー氏は何故米国株を買い増したのだろうか。

ヒントは最大ポジションが小型株ETFだったことである。

グローバルマクロ戦略で小型株を買うべき状況は何か。金利低下かリスクオンの状況である。つまりドラッケンミラー氏は強気相場を予想している。

その理由は何だろうか。ドラッケンミラー氏が最近のインタビューで、パウエル議長の利下げ予告がインフレを再加速させかけていることに激怒していたことを思い出したい。

ドラッケンミラー氏はパウエル議長がインフレ退治をやり切るとは信じていない。逆に言えば、リスクオフになるような急激な引き締めは行われないと踏んでいるのかもしれない。

いずれにしても小型株を大量買いするような状況とはそういうものだ。ドラッケンミラー氏はリスクオンを予想している。それは米国株を買い持ちにしている投資家には朗報だろう。