ドラッケンミラー氏、やはりアルゼンチンのミレイ大統領が好きだった

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、CNBCのインタビューでアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領について語っている。

自由市場を支持する政治家

2024年はアメリカにとって大統領選挙の年であり、民主党と共和党の候補にはそれぞれバイデン氏とトランプ氏が決まっている。

しかしドラッケンミラー氏にとってはどちらも財政赤字を増やしてインフレを実現した政治家である。だから彼は次のように言っている。

わたしが支持する候補者はいない。わたしは自由市場と移民に賛成し関税に反対する、レーガンの時代の昔ながらの共和党支持者だ。

だが世界に1人だけドラッケンミラー氏の眼鏡にかなう政治家がいるらしい。彼は次のように続けている。

世界で自由市場を支持するリーダーは、奇妙なことにアルゼンチンに1人だけ居る。ハビエル・ミレイ氏だ。

アルゼンチン大統領ハビエル・ミレイ氏

ここでは何度か紹介しているが、アルゼンチン大統領に選ばれたミレイ氏は、政治家が恣意的な資金配分を行なう財政出動は経済を悪化させると考えるオーストリア学派の経済学者で、そうだろうとは思っていたがドラッケンミラー氏と話が合うらしい。

アルゼンチン国民がそのような政治家らしくない人物を大統領に選ぶことになった経緯については以下の記事で説明している。

アルゼンチンは緩和のやり過ぎで年140%ものインフレになったので、政治家が自分の都合で紙幣印刷を出来ないように自国通貨を廃止して代わりにドルを採用すると主張したミレイ氏が選ばれたのである。

ドラッケンミラー氏から見たミレイ氏

ドラッケンミラー氏はミレイ氏の政策をどのように見ているのだろうか。彼は次のように述べている。

彼の政策は興味深い実験になる。彼は非常に知的なリーダーで、オーストリア学派の経済学を教えていた人物だ。

ドラッケンミラー氏は政治家が自分の票田に資金を撒くためにインフレを引き起こしたと考えているので、ミレイ氏を好むのも当然だろう。

実際、ミレイ氏は就任早々政治家のポストを失くした。「お前の席ねえから」ということである。

政治家は不要だというオーストリア学派の考えを地で行く人物である。

また、ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

わたしが前に年金について語っていたことを覚えているだろうか。

ドラッケンミラー氏はアメリカの年金を持続不可能なものと切り捨て、どうせ給付を減らさなければならないなら今の若者が老人になってから減らすのではなく、今の段階でもう給付を減らすべきだと主張していた。

だがアメリカにも日本にもそれが出来る政治家がいない。だがアルゼンチンには居た。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

ミレイ氏は就任後に社会保障費を35%も削減した。プライマリーバランスの赤字はGDPの4、5%から3%の黒字になった。

GDPは大きく打撃を受け、3ヶ月の不況になったが、支持率は下がっていない。

彼は非常に知的で経済学を知っているだけでなく、ショーマンでもある。人々は彼の演じる大統領を好んでいるので、彼は今のところ民衆の支持を維持できている。

結論

アルゼンチンでは政治家が国民から徴税して自由に自分の票田に配るビジネスをする世界が終わろうとしている。

ミレイ氏はかなり頑張っているが、既得権益層の反発はかなり大きく、例えば彼の緊縮財政に対抗して労働組合がストライキを実行したが、労働者からはストで働けなくなれば収入が得られなくなるなどの否定的な声が上がっているという。

オーストリア学派の天才経済学者、フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣論集』で語っていた以下のコメントが思い出される。

将来の失業について責められる政治家は、インフレーションを誘導した人びとではなくそれを止めようとしている人びとである。

インフレ政策は経済成長の前借りなので、インフレを止め始めると不況は免れられない。

ミレイ氏は何処まで信念を通すことが出来るだろうか。


貨幣論集