引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏のCNBCによるインタビューである。
今回はドラッケンミラー氏が長らくポートフォリオ中の最大銘柄として保有し、株価が1年で暴騰したNVIDIAについて語っている部分を紹介したい。
暴騰したNVIDIAの株価
コロナ後に米国株は上がったが、中でもNVIDIAの上昇率に勝てる銘柄はほとんどないのではないか。
NVIDIAはAI銘柄の筆頭である。AIの複雑な計算を行うGPUを製造している。だからChatGPTの流行を受けて売上も大きく上がり、株価も大きく上がった。
ドラッケンミラー氏はこの銘柄が多くの人から注目される前からこの銘柄を買っていた。だがNVIDIAを見つけたのは彼自身ではないらしい。彼は次のように語っている。
NVIDIAを初期に発見したのはわたしではない。わたしの会社の若いパートナーだ。彼が2022年の秋にわたしに電話してきて、「AIはブロックチェーンよりはるかに大きなブームになる」と言った。
わたしは彼にどうトレードすべきか聞いたら彼はNVIDIAという会社を買うべきだと答えた。わたしはその会社の綴りすら知らなかった。
雇うべきは優秀な人材である。しかもそれはChatGPTよりも前の話らしい。ドラッケンミラー氏は次のように続けている。
NVIDIAを買って1ヶ月後にChatGPTが発表された。その凄さはわたしのような老人にも分かった。
だからNVIDIAの買いポジションを大きく増やした。
それから長らくドラッケンミラー氏はNVIDIAをポートフォリオ中最大のポジションに据えてきた。そしてNVIDIAの株価はこうなった。
ドラッケンミラー氏の購入した2022年の秋から2年足らずで6倍である。NVIDIAを提案した若い社員はドラッケンミラー氏のファミリーオフィスに就職できるのだから元々相当優秀なのだろうが、この件で大いに報酬を貰ったことだろう。
NVIDIAは一部利益確定
さて、気になるのはドラッケンミラー氏がNVIDIAの今後をどう考えているのかだが、結論から言えば一部を利益確定したらしい。
だがNVIDIAの株価は150ドルから900ドルまで上がった。わたしはウォーレン・バフェット氏ではないから、同じ銘柄を10年も20年も持たない。わたしがウォーレン・バフェット氏だったら良かったかもしれないが。
だから3月末にNVIDIAのポジションを減らした。
同じグローバルマクロ戦略の投資家としてはドラッケンミラー氏の気持ちが分かる。自由に銘柄を乗り換える戦略であるため、美味しい銘柄の美味しい部分だけ取ることができる一方で、非常に優れた銘柄に関しては超長期で持ち続けた方が良い場合もある。
その辺りが「ウォーレン・バフェット氏だったら良かったのかもしれない」という言葉に出ているのではないか。
ドラッケンミラー氏のNVIDIA株価見通し
だがドラッケンミラー氏はそれでもここで一旦船を降りるらしい。彼はこう続けている。
AIについては他の何よりも強気ではある。ただ、1999年にインターネットについて語っていた時のことを思い出したい。誰もインターネットがそれから20年でこれほど大きなものになるとは思っていなかった。当時はiPhoneもUberもFacebookもなかった。
だがそれでもNasdaqを1999年に買えば、そうした繁栄の前に株価は80%も下がった。
ドラッケンミラー氏はドットコムバブルのことを言っているのである。当時、AppleもMicrosoftも大きく株価が落ちた。本当に優れた銘柄でも、短期的には大幅下落することもある。
ちなみにドラッケンミラー氏はドットコムバブルで失敗してかなり痛い目に遭っている。
もちろん当時のインターネット関連株と今のNVIDIAではバリュエーションがまったく違う。しかしドラッケンミラー氏は今後数年の相場見通しを心配しているらしい。
彼は次のように続けている。
AIが同じようになるとは思わない。だが似たようなことは起こるかもしれない。
今の財政出動のツケを払う瞬間が来る。それは4年から5年の間には大きなツケを払う瞬間が来るかもしれない。NVIDIAは今は大きく評価されているが、そうなれば過小評価される瞬間が来るかもしれない。
ドラッケンミラー氏は米国政府がいまだに行なっている巨額の財政出動がインフレを再燃させることを心配している。
インフレはNVIDIAにとって最悪のシナリオである。何故ならば高成長銘柄ほど高金利に弱いからである。それは2022年のインフレ・利上げ相場でNVIDIAが暴落していることからも分かる。
だからドラッケンミラー氏は一度船を降りることにしたらしい。ただ、NVIDIAの将来性については大きく買っていることに変わりはないようだ。
ドラッケンミラー氏は次のように言っている。
NVIDIAはこれから10年買ったり売ったりすることになるだろう。