アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、アメリカのインフレや最近発表された雇用統計についてコメントしている。
アメリカ経済減速の5月統計
今月に入ってから発表されたデータは一貫して弱いものだった。GDPは減速し、雇用統計では賃金インフレの減速が示された。
失業率も上がっていた。インフレ政策では実体経済にインフレ時ではなくインフレ減速後に問題が生じるというフリードリヒ・フォン・ハイエク氏のマクロ経済学がそのまま実現しようとしている。
だが一方で、先月発表されたCPI(消費者物価指数)統計では、インフレ再加速の兆候が報告されていた。
この強弱入り交じるデータをどう捉えれば良いのか。
アメリカ経済最大のリスク
アメリカ経済は強いのか弱いのか。サマーズ氏は強弱入り交じる様々なデータに言及した上で、次のように纏めている。
結局、われわれは週の初めに居た場所へと戻ってきているのではないか。一番ありそうなシナリオは年内の利下げなしか少しの利下げで、またしばしば起こるように経済がいきなり滑り落ちてゆくリスクもまた多少あるということだ。
しかしこれではどっちつかずの答えである。
微妙な経済データをすべて消化することは必要である。だがサマーズ氏がどのリスクを一番懸念しているかと言えば、これまでのサマーズ氏の経済予想を聞いてきた読者であれば想像がつくのではないか。彼はこう続けている。
だがそうしたリスクよりも大きいのはノーランディングのシナリオで、インフレが高止まりするというものだ。
結論
コロナ後の経済予想について、識者の中で一番当てているのはサマーズ氏だと言って良い。ジェフリー・ガンドラック氏などは2022年後半からのインフレ減速を見事に当てたが、その後もインフレ減速予想にこだわりすぎた感はある。
一方で、サマーズ氏は短期的なデータに振り回されることなく一貫してインフレはそう簡単には下落しないと主張し続け、それは今までずっと当たっている。
インフレはどうなるだろうか。次のCPI統計までもう少し時間があるが、もう一度CPI統計の内訳を精査してみる必要があるだろう。