DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、先日のFed(連邦準備制度)のFOMC会合にコメントしている。
パウエル議長のインフレ予想
先日の会合では政策金利は維持された。パウエル議長がインフレ再加速を示唆する最近の経済統計にどうコメントするかが注目されたが、インフレ率は持続的に下がってゆくという予想は維持された。
会合後に行われたパウエル議長の記者会見について、ガンドラック氏は次のように述べている、
一番重要だった言葉は「ありそうにない」だ。
「次の政策変更が利上げとなることはありそうにない」、だが、その言葉でパウエル議長は利上げについてまったく考えていないのだと納得させるよう必死だったように見えた。
「利上げはありそうにない」とわざわざ言ったパウエル氏の言葉は、逆に現状が利上げを気にしなければならないような状況であることを逆に示唆してしまっている。
インフレ統計については以下の記事で解説している。
アメリカのインフレ動向
記者会見を聞いての筆者の感想は、インフレ再加速が本当に確定的な状況になるまでは、パウエル氏はタカ派にはならないというものだ。
パウエル氏は2021年に既に発生していたインフレを無視し、「インフレは一時的」だと主張した。
それで間違えた過去があるので、今態度を転換してから後でまた転換しなければならなくなる事態を恐れているのである。
インフレがこのまま再加速しないというのがパウエル氏にとってのベストシナリオだろう。だがガンドラック氏は次のように言う。
パウエル議長は利上げなしでインフレ統計が下がってくることを祈っているように見える。
パウエル氏が「進展はなかった」と表現した第1四半期のインフレデータは「一時的」なものだというわけだ。
ガンドラック氏はパウエル氏が2021年と同じ間違いをしている可能性を指摘しているわけである。
ガンドラック氏のインフレ予想
ではガンドラック氏はアメリカのインフレ動向についてどう考えているのだろうか。
ガンドラック氏は次のように述べている。
インフレはどうなるだろうか? 原油価格が80ドルとなるなかで、インフレ率が持続的に3%以下まで下がるということが起きるかどうか。
ガンドラック氏が原油価格を気にしている理由は筆者にも分かる。まず、食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前月比年率で次のように推移している。
前月比年率は1月ごとの変化率だが、ここ半年の動きを見ればコアインフレ率は良くて3%台後半で、恐らくは4%台だということが分かるだろう。
これに原油価格の変化を足すとどうなるか。原油価格は次のように推移している。
最近いくらか下がってはきたものの、年始から見れば上昇している。
ここで前年同月比のデータがどうなるかを考えてもらいたい。前年同月比のデータは対象となる月とその1年前の同じ月を比べるので、仮に原油価格がこのまま80ドル近辺で年末まで推移すれば、前年同月比は80ドルと年末年始の70ドルを比べることになり、インフレ率を押し上げることになるわけである。
それが元々4%台のコアインフレに足されると全体のインフレ率は5%台になりかねない。
結論
キーポイントは2つある。まずはここ最近のコアインフレ率が目標の2%を大きく上回っていること、そして原油相場がまだ上昇トレンドのままだということである。
この2つが維持される限り、パウエル議長が言うようにインフレ率がこのまま下がってゆくことは有り得ない。
可能性があるとすれば金利上昇が原油価格を押し下げるシナリオだが、パウエル氏自身が利上げを拒む態度を続ければ、金利を低下させて自分でインフレ再加速を実現してしまうことになるだろう。
インフレ・高金利相場は継続である。