レイ・ダリオ氏: バイデン氏が大統領選挙で再選なら株価にはマイナス

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の自社配信におけるインタビューである。

今回は今年のアメリカ大統領選挙で現職のバイデン大統領が再選した場合の話を紹介したい。

2024年アメリカ大統領選挙

前回の記事では、ダリオ氏はトランプ氏が当選した場合の話について語っていた。

ダリオ氏はこの記事でインフレや外交政策などについて語っていた。

ではバイデン氏ならどうなるか? ダリオ氏は次のように述べている。

ではジョー・バイデン氏が当選した場合のことを考えてみよう。彼の状態を考えればその可能性は低いが。バイデン氏は多分次の任期をまっとうできる状態ではないだろうというのが少なくとも主流の考え方だ。

民主党からバイデン大統領が再選を目指して出馬するということについて多くの人が驚きの目で見ている。

何故ならば、高齢のバイデン氏はパーティで数ヶ月前に亡くなった同僚を探して「ジャッキーはどこだ?」と言いながらさまよい歩く様子を目撃されるなど、どう考えてもあと4年も大統領が務まるような状態ではないからである。

何より、バイデン氏を選んだ民主党員は何を考えているのか? 他に誰もいなかったのか? 恐らくは民主党内部の重鎮たちが扱いやすいバイデン氏を好んでこの結果になっているのだろうが、民主党の外からこの状況を見ると異様である。本当に他に誰もいなかったのか。

民主党の政策

ということで、ダリオ氏はバイデン氏自身の考えというものを探るつもりはないようだ。彼は次のように続けている。

だから選挙については、民主党の政策は何かということが問題になる。

民主党は分断している。穏健な民主党員も居れば、過激派の民主党員もいる。過激な左派の民主党員は大規模な富の移転を望んでいる。

前回の記事でも述べたが、民主党は野党共和党に比べて富裕層への課税に積極的である。特に2016年の大統領選挙時に民主党の予備選でヒラリー・クリントン氏に敗れたバーニー・サンダース氏などの支持者たちは、とにかく富裕層に課税して貧困層にばら撒くべきだと考えている。

民主党でなくとも、アメリカの財政赤字をどうするのかという問題がある。ダリオ氏は次のように説明している。

アメリカは問題を抱えている。財政問題や、インフラ、教育などのことを考えれば、アメリカは穴に落ちている。穴に落ちているということは、誰かが支払いを負担しなければならない。

支払うことになるのは富裕層と企業ということになるだろう。だから法人税がどうなるかということを考え始めなければならない。そしてそれは金融市場にとっては何を意味するだろうか?

法人税と株価

思い出してほしいのは、2016年にトランプ氏が勝利したとき、市場の反応は株高だったということだ。政治的にトランプ氏を嫌ったジョージ・ソロス氏などはトランプ相場における株高を空売りして大損を出した。

そしてこの株高の理由こそが法人減税だった。

逆にバイデン氏が財源として法人税の増税を行なうとすれば、それは株価にとっては当時のトランプ相場の逆を意味することになる。

だからダリオ氏は次のように言う。

一番重要なのは、株式の価値というのはその企業の税引き後の差し引きのキャッシュフローの現在価値だ。だから税金が上がれば金利が上がるようなものだ。それは市場にとってはマイナスだ。

結論

税収とは歳入の話だが、歳出に関して言えばバイデン氏はこの4年間で大規模な財政支出を行なっている。

だから法人増税をするにしても、財政支出の効果との打ち消し合いになるだろう。

一方で、増税は少なくとも国債市場にとってはプラスになるかもしれない。多くの著名投資家が大量の国債発行による国債暴落を懸念している。

だから国債に関して言えばバイデン氏の方が市場にとってプラスに働くかもしれない。

だがその財源が法人増税ならば、国債にはプラス、株価にはマイナスなので、本来国債市場に行くはずだった下落分を株式市場に置き換えたようなものだとも言えるだろう。

国債市場を支えれば株式市場が死ぬ。株式市場を支えれば国債市場が死ぬ。そして両方支えればインフレになる。

それがアメリカの状況である。莫大な現金給付はコロナ後には可能だったが、それがインフレを引き起こしてしまったため、もう一度やると何処かが破綻するだろう。

さてアメリカはどうするのか。11月の大統領選挙を楽しみに待ちたい。