ドラッケンミラー氏: アメリカは中国に抜かれず世界首位であり続ける

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、How Leaders Leadのインタビューで中国経済とアメリカの覇権について語っている。

中国経済と住宅バブル崩壊

中国経済については色々な見方がある。これまで中国経済に一番強気だったのは恐らくBridgewaterのレイ・ダリオ氏で、彼はアメリカの覇権は衰退し中国に抜かれるという予想を長期的には信じている。

それは、彼が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で詳しく解説していることだが、オランダ海上帝国も大英帝国も栄えて衰退したように、歴代の覇権国家は100年から200年で寿命を迎えて次の覇権国家に後退したからである。

アメリカの覇権はいずれ終わる。それは確かだろう。ダリオ氏が指摘しているように、歴史上複数回にわたって覇権国家に返り咲いた国が中国だけであることも事実である。ローマ帝国もギリシャ帝国も返り咲けなかった。

一方で、短期的には中国経済には大きな懸念がある。バブル時代の日本のように、長年の不動産バブルが崩壊し、2021年に恒大集団の問題が明らかになってから今でも問題が尾を引いているように、長いバブル崩壊のプロセスにある。

習近平政権

これはバブル期に日本経済にとってもそうだったように、中国経済にとってこれまで数十年の高成長の総決算である。

それに対処するのが中国共産党と習近平氏である。だが彼らは対処できるのか。ドラッケンミラー氏は次のように言っている。

習氏は過去20年か30年で中国経済が成長した理由を理解していないと思う。

理由は明らかである。習氏の経済政策は学習塾の禁止やゲーム産業への規制など、自国の産業に対して懲罰的であることで知られる。更にはAlibabaのジャック・マー氏がほとんど国外追放のようになっているのは、習氏の政治派閥と何か利害対立があったのではないかと筆者は推測している。

日本やアメリカでもそうではあるが、中国の経済はそれ以上に政治的理由によって無駄な損失を強いられている。

中国の経済成長の理由

中国のこれまでの経済成長の理由は何か。ドラッケンミラー氏は次のように説明する。

鄧小平氏が自由市場改革をし、起業家が成功するのを助けた。

鄧小平氏は1978年から1989年まで中国の実権を握った人物で、近年の中国の経済成長は彼が導入した資本主義的政策から始まっている。

ドラッケンミラー氏は次のように続けている。

中国は習氏が来るまで完全に正しい方向に進んでいたが、今では完全に間違った方向に進んでいるように見える。

習近平政権が反ビジネス的だというのは、ダリオ氏でも否定できないようだ。むしろダリオ氏は、習氏が2022年に行なった人事改革で政権から親ビジネス的な政治家が軒並み消えたことを誰よりも心配している。以下の記事で説明しているが、これは重要な変化である。

結論

それは習氏の自国産業を自分で潰す政策が継続されるということなのだろうか。少なくとも中国株は大惨事になっている。香港ハンセン指数は以下のように推移している。

株価がコロナショックの時を大きく下回っている主要な国は中国ぐらいなのではないか。

下落相場ももう5年目になるので、投資家としては空売りよりは底打ちを考えたくなる頃合いではある。

しかし問題は、中国経済はこのバブルを抜ければ回復してゆくのか、あるいは日本のバブル崩壊後のように失われた30年となり株価は停滞するのかということだろう。

ドラッケンミラー氏は習氏のもとで中国経済が回復するとは考えていないようである。彼は次のように述べている。

中国がアメリカを追い抜くという考えは、1960年代にソ連がアメリカを追い抜くと予想した人や、1980年代に日本がアメリカを追い抜くと予想した人に似ている。

そしてアメリカについては次のように述べている。

アメリカは多くの問題があるにもかかわらず、地獄の王であり続ける可能性が高い。


世界秩序の変化に対処するための原則