ドラッケンミラー氏: 投資する時にはその銘柄を分析する前に投資しろ

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用したことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏がHow Leaders Leadのインタビューでポジションの始め方について語っている。

投資銘柄の分析

投資家が投資をする時、その人はまず何かの銘柄を見つける。米国株でも日本株でも良いし、NVIDIAでもトヨタでも何でも構わない。

きっかけは何かのニュース記事だったり、日常で見つけた売れ筋の商品だったりするだろう。しかしその銘柄を見つけた段階では、その銘柄の売上高も利益も知らないことが多い。

投資家はそこから銘柄の分析を始めるわけだが、何処まで詳しく分析すれば買っても良いのか。

ドラッケンミラー氏ほどの専門家であれば、入念な分析をしてから投資に踏み切るのか。しかしドラッケンミラー氏の答えはむしろ真逆である。彼は買ってから分析しろと言う。

十分に考える前に買っても良いのか。ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

これはソロス氏の受け売りだったと思う。わたしも元々そうしていたが。ソロス氏は「投資してから分析しろ」とよく言っていた。

買ってから分析する理由

何故分析を終える前に買ってしまうべきだとドラッケンミラー氏は言うのか。

1つの理由は、実際にポジションを取り始めると考えざるを得なくなるからである。これは実際に資金を賭けないデモトレードでは勉強にならない理由でもある。

実際に自分のお金がかかっているという感覚が投資家にとって重要なのである。買った銘柄が下落すればその理由を嫌でも考えざるを得ない。

だから筆者も投資初心者にはデモトレードではなく、少額でも良いから先ず始めてみることを奨めている。

また、ドラッケンミラー氏が言うには、「買った後に分析する」戦略は現代においてはより有効だという。

ドラッケンミラー氏は以下のように説明している。

それは現代では一層正しいと言える。何故ならば、わたしが金融業界に入った1975年には、わたしの大学からウォール街に就職したのはたった2人だった。

だが2000年までにはアイビーリーグの優秀な学生はほとんど金融業界に就職するようになっていた。

ソロス氏がドラッケンミラー氏に「買ってから分析する」戦略について語ったのは何十年も前の話だが、当時は金融業界は人気の職種ではなかった。

だが今では多くの人材が金融業に流れ込んでいる。そしてドラッケンミラー氏は次のように続ける。

だから市場では競争が激しくなり、情報戦も激しくなった。インターネットもあり、情報はすぐに広まる。

だから良いアイデアを思いついてから長々と2、3週間も分析していたら、多くの場合はその間に株価が動いてしまうだろう。

それでその銘柄を買えなくなる。株価が100ドルの時に見つけていたのに、150ドルになっていたらどうだろう。

中央銀行の政策決定会合やCPI統計、雇用統計などのデータは、今やアルゴリズム投資のお陰で発表から数ミリ秒で織り込まれる。そうした機械による分析は雑なものに過ぎないが、そこから数時間から数日もすれば多くの優秀な投資家が分析を終え、その結果が株価に反映されるだろう。

だから早く分析して投資をしなければ、良い情報はすぐ織り込まれて株価が上がってしまうのである。

結論

よってドラッケンミラー氏は次のように結論している。

だから何か良いアイデアを思いついた時には、わたしならまず買う。そして分析する。分析が終わり、自分が間違っていたと結論した場合にはその時にその銘柄を売るだろう。

その理由は、現代では情報が非常に早く広まり、株価に織り込まれてしまうからだ。

とはいえ、甘い考えで投資をして損をすることもあるだろう。ドラッケンミラー氏が言う「分析の前に投資する」というのは、とりあえずポジションを持ってみる程度の意味である。つまり、そのポジションの規模は大きくない。

ドラッケンミラー氏はポジションの規模に緩急をつけることの大切さについても以下の記事で語っている。そちらも参考にしてもらいたい。