ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、投資を行なうべきタイミングについてHow Leaders Leadのインタビューで語っている。
何にいつ投資すべきか
ドラッケンミラー氏のインタビューを引き続き紹介しているが、今回の話題は売買のタイミングである。
ドラッケンミラー氏は化学株を例に出して次のように語っている。
化学株を買うべきタイミングはいつか? ウォール街の常識ではその企業が大きな利益を出している時に買うべきだということになる。
だがそれは化学株を買うべきタイミングではない。何故ならば、大きな利益が出ている時には化学企業は資本を使って生産能力を拡大し、3年か4年後には供給が過剰になって損失を出しているからだ。
多くの産業にはサイクルがある。好景気の中には後の不景気に繋がる種があり、不景気の中には後の好景気に繋がる種がある。
例えば半導体などもそうだが、化学産業は非常に経済サイクルに左右されやすい産業である。景気によって需要が大きく左右される産業では、生産能力の調整が問題となる。何故ならば、需要が急に減ったり増えたりしても、生産能力は需要ほど急激には増減させられないからだ。
急に需要が増えたからと言って、設備投資は数日で済ませられるものではない。逆に急に需要が減っても作ってしまった設備は何年も使えるものなので、需要が減っている中で市場に製品があふれ価格が下がるということになってしまう。
サイクルがあることは化学企業にも分かっているのだが、サイクルを読むことは容易ではない。だから基本的には企業は好景気の時に設備投資を増やし、不景気の時に設備投資を減らす。
結果的に好景気は設備投資を呼んでその後の供給過剰の原因となってしまう。特に、それがたまたま景気後退と重なってしまった時は悲惨である。
ドラッケンミラー氏が言っているのはそういうことである。彼は数年後の供給過剰が予想される好景気に化学株を買うべきではないと言っている。
だが彼はこう続けている。
では化学企業が損失を出している時はどうか? 企業は生産能力を拡大するのを止めるので、3年か4年後には供給が落ち込んで利益率が大きく上がっているだろう。
結論
ドラッケンミラー氏が言っているのは、単に利益を出ている株を避けよということではない。「今利益が出ている」ことを理由に投資してはいけないということである。
ドラッケンミラー氏はこう纏めている。
投資家は常に18ヶ月から24ヶ月後に世界が今と比べてどうなっているかを想像しなければならない。
あらゆる投資にはサイクルがある。化学株には数年のサイクルがあり、株式市場全体には9年の上げ相場と1年の下げ相場という10年程度のサイクル(ドットコムバブル、リーマンショック、コロナショック)があり、更に金融市場全体には40年から50年のインフレとデフレのサイクルがある。
どのような方法で投資をしても、投資家はサイクルから逃げられない。短期投資すれば短期のサイクルに、長期投資すれば長期のサイクルに左右される。どれほど長期で投資をしてもそこにはサイクルが存在するからである。
だから自分の投資をしているタイムフレームと、そのタイムフレームに合ったサイクルを考え、自分の投資のタイムフレームと、そのサイクルにおけるタイミングが果たして合っているのかを考える必要があるのである。