ドラッケンミラー氏、リーマンショックをトレードした時のことを語る

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、How Leaders Leadによるインタビューで2008年のリーマンショックをトレードした時のことについて語っている。

リーマンショックにおけるドラッケンミラー氏

2008年のリーマンショックはアメリカの住宅バブルに端を発する世界的なバブル崩壊で、非常に多くの人が金融市場で損失を出し、世界で多くの国が景気後退に陥ったが、何人かの優れたヘッジファンドマネージャーは危機を予想して利益を上げていた。

ドラッケンミラー氏はその1人である。彼はそもそも損失を出した年が存在しないので、当然ながら2007年も2008年も利益を出しているわけである。

ドラッケンミラー氏はリーマンショックで儲けたことについて次のように語っている。

リーマンショックのトレードは簡単だったし、かなり自信もあった。

さらりと言うあたりが流石である。

アメリカの住宅バブル

2008年のリーマンショックは、アメリカの住宅バブルが2007年に天井に達したことが元々の原因である。そして何故アメリカが住宅バブルになったかと言えば、ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

最近もあったことだが、Fed(連邦準備制度)の大罪の1つは、政治的な理由で金融政策を過度に緩和的にする傾向があることだ。市場のパーティを終わらせるべき時にアルコールを取り下げない。

最近もあったというのは、2021年で既にアメリカでは明らかに物価が高騰していたにもかかわらず、パウエル議長が緩和を止めなかったことである。

中央銀行はインフレを引き起こす。自分でインフレが目標だと言っているのだから、有言実行しているのである。その理由は以下の記事で説明している。

リーマンショック前の住宅価格

さて、リーマンショックに話を戻そう。ドラッケンミラー氏が注目したのは住宅価格のチャートである。彼は次のように述べている。

2005年か2006年にわたしは住宅価格の50年来のトレンドラインを見た。

住宅価格は年間3%の上昇率で常に上がり続けていて、そのトレンドラインからほとんど離れない状態が50年続いていた。

だがそこから住宅価格は突然空高く上がり、その状態が4年か5年続いていた。それは明らかに誰も見たことのないようなバブルだった。

リーマンショック前後のアメリカの住宅価格のチャートは以下のようになっている。リーマンショック前の数年に勾配が急になっていることが分かる。

住宅バブルは続かない

アメリカの住宅バブルについてはリーマンショックの数年前から警告していた人が居た。だがそれらの声は無視された。

しかしまだバブル崩壊の数年前である。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

その時、よりにもよってリーマンブラザーズから1人のアナリストがわたしのところにやって来た。2005年の5月だった。

そして彼はこう言った。「この状況が2007年の第3四半期より後まで続くことは有り得ない」

この男は数学の天才だった。わたしはArison Conferenceでの講演でその男の言ったことの受け売りをすべて話し、バブル崩壊を予想した。

リーマンブラザーズは言うまでもなくリーマン・ショックで破綻した投資銀行の名前である。2005年当時は当然ながらまだ存在した。

そしてリーマンブラザーズのアナリストがバブル崩壊を予想していたのである。何故それでバブル崩壊がリーマンブラザーズを直撃したのかは分からない。優れた社員が1人居たところで、彼の意見は無視されたのだろう。

バブル崩壊へ

さて、繰り返すが、まだバブル崩壊の少し前である。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

2006年は辛い年だった。何故ならば、誰もが市場で大儲けしていた一方で、わたしは世界が崩壊することに賭けて空売りをしていたからだ。

わたしのパフォーマンスが5%のプラスだった一方で、同業者は10%や15%のリターンを上げていた。

バブル崩壊前に空売りをしていたのにその年をきっちりプラスのリターンで終えているところがドラッケンミラー氏らしい。

しかしバブルの崩壊は2007年から始まる。ドラッケンミラー氏はこう続けている。

だが2007年に地獄が現れた。わたしたちのポートフォリオは準備万端だった。

50年上がり続けた住宅価格は、2007年から下落に転じている。ドラッケンミラー氏のかつての上司であるジョージ・ソロス氏は、リーマンショック前に出版された著書『ソロスは警告する』で次のように言っている。

2007年春、ついに終わりのはじまりがやって来る。住宅ローン大手のニュー・センチュリー・ファイナンシャル社が、サブプライム問題が原因で倒産したのだ。

そこから先は、私のバブルのモデルでいう「黄昏の期間」である。住宅価格が下がりはじめているにもかかわらず、ゲームの終了が読み取れない参加者が、まだ大勢残っている段階だ。

そしてアメリカの住宅バブルは崩壊し、2008年にはリーマンブラザーズが破綻、株式市場は底まで行ったのである。

結論

ドラッケンミラー氏は次のように纏めている。

あれは歴史的なバブルだった。それは明らかだった。

人々が住宅のために積み上げた借金は8,000億ドルに達しており、住宅を転売して儲けたりその他あらゆる馬鹿なことをやっていた。あれは明らかなバブルだった。

住宅価格が50年間上がり続けたからと言って、状況が変わっても引き続きそうなるとは限らない。

ここでは本当に何度も言っているが、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを一切保証しない。それは日本のバブル崩壊まで上がり続けた日本の不動産価格にも言えることであり、現在崩壊している中国の不動産バブルにも言えることであり、そして40年上がり続けた米国株にも言えることである。

また、リーマンショックで利益を出した投資家としては、他にジョン・ポールソン氏が有名である。以下の記事で解説しているのでそちらも参考にしてもらいたい。


ソロスは警告する