引き続き、Palm Beach Civic Associationによるポール・チューダー・ジョーンズ氏のインタビューである。今回は今年のアメリカ大統領選挙の結果が金融市場に及ぼす影響について語っている。
アメリカの財政赤字
これまでの記事では、ジョーンズ氏はアメリカの財政赤字の問題について語っていた。
インフレによりFed(連邦準備制度)が量的緩和をしていない現状では、何の対価もなく国債を大量発行してばら撒きを行なうことはできない。それは借金に依存したばら撒きを前提に長期上昇してきた米国株にとっても危機である。
だからアメリカには2つの道筋がある。借金による経済成長率の水増しを諦めて本来の成長率に戻り、ばら撒きを前提として何十年も上がってきた米国株を暴落させるのか、あるいはばら撒きを続けてインフレ再燃を受け入れるかである。
インフレか株価暴落か
アメリカ経済はここからどちらの道に進むのか。ジョーンズ氏は次のように主張している。
わたしのメインシナリオはインフレが来年のいつかのタイミングで加速するというものだ。
トランプ氏が大統領になり、パウエル議長に圧力をかけて金利が下がる。そして恐らく1975年から1976年にかなり近い状況になる。
今年11月のアメリカ大統領選挙は、現在与党と野党で予備選が行われているが、それぞれバイデン大統領とトランプ元大統領が優勢であり、今年も彼らの対決となりそうだ。
そしてその2人でどちらが勝ちそうかと言えば、現状を見る限りトランプ氏である。
そしてジョーンズ氏はトランプ氏が低金利を望むと踏んでいるのである。だが1975年というのはどういう時期だったか。
インフレ再燃の時代
ここの読者には1975年と言っただけで説明の必要もないかもしれないが、この年は1970年代のアメリカ物価高騰の時代の真ん中にあたる。
この時代のインフレ率と政策金利のグラフを並べてみよう。
当時のインフレは3回の波に分けて来たが、1975年は第2波が終わりかかった時期である。それはインフレ率が下落している今のアメリカ経済と被る。
この状況で高金利を続けるのか、続けないのかがインフレかデフレかを分けるのである。1975年のアメリカの選択はどうだったか? ジョーンズ氏は次のように説明している。
Fedはアーサー・バーンズ議長のもとで利下げを始めたが、利下げは早すぎ、かつ大きすぎた。そして1970年代後半の大規模なインフレ再燃に繋がった。
そしてアメリカはインフレ第3波へと向かい、最終的にはポール・ボルカー議長の容赦ない金融引き締めで大量の失業者を出しながらインフレを抑えたのである。
トランプ氏ならインフレ再加速シナリオ
ジョーンズ氏は、今年トランプ氏が再選すれば1975年のような相場になると考えているのである。
彼はこう続けている。
トランプ氏なら、株式を持つのもいい。すべてのインフレ資産は買いだ。ビットコイン、ゴールド…。期間の長い債券は何も持ちたくない。
一方で、ジョーンズ氏はメインシナリオではないと考えてはいるが、バイデン氏再選ならどうなるのか。彼はこう述べている。
もしバイデン氏が再選すれば、間違っているかもしれないが緊縮財政に向かうだろう。
パウエル議長はこれまでのFed議長と比べ、誰よりも短い時間で5%の利上げを行なった。そしてジョー・バイデン氏は何も言わなかった。
緊縮財政シナリオなら、株式は持ちたくない。債券も持ちたくない。