チューダー・ジョーンズ氏: アメリカは25年以内にデフォルトしドルは基軸通貨でなくなる

引き続き、Palm Beach Civic Associationによるポール・チューダー・ジョーンズ氏のインタビューである。

アメリカの財政赤字

これまでの記事では、ジョーンズ氏はまず米国株の長期的上昇が財政赤字の際限なき上昇に依存していることを指摘していた。そしてそれが長期的には続かないということを主張していた。

何故ならば、財政赤字を垂れ流すためには国債を大量に発行しなければならないからである。

これまでは政府が発行した国債を中央銀行が量的緩和によって買い上げてきた。だがインフレが起こってしまった今、アメリカは量的緩和を停止している。

だから国債を買ってくれる中央銀行はもういない。その状態で国債を大量発行すればどうなるかと言えば、国債価格が下落し金利が上昇するのである。

ここまでが前回までの話である。国債を大量発行すれば国債が下落する。だが国債を大量発行して財政赤字を垂れ流さなければ米国株の株高が維持できない。

これがアメリカの直面しているジレンマなのだが、実は米国経済の問題はこれだけではない。

基軸通貨ドル

更なる問題とは何か。ドルである。

そもそも何故アメリカはコロナ後にGDPの15%近い赤字を垂れ流して現金給付というばら撒きを行いながら無事でいられたのか。同じ無茶をやろうとしたイギリスでは国債が暴落し首相の首が飛んだ。

アメリカよりも現金給付の規模がずっと少なかった日本でさえも円安による輸入物価上昇に苦しんでいる。

では何故アメリカはそれよりも大規模な紙幣印刷を行いながら無事でいられたのか。

その理由は基軸通貨ドルである。基軸通貨とは世界中の国が貿易や決済に使う通貨のことであり、世界中で使われるのでアメリカがどれだけドル紙幣を刷っても、それを買ってくれる人が世界中にいる。

だからイギリスに出来なかったばら撒きがアメリカには可能だった。紙幣印刷によってドルが急落することがなかったからである。

凋落しつつあるドル

だが問題は、長期的な視点で見ればドルの状況は変わりつつあるということである。

世界の貿易に占めるシェアをBRICS諸国に奪われつつあるという問題もある。更に、ウクライナ情勢などを巡ってアメリカがドルを利用した経済制裁を他国に振りかざしてしまったことが致命的である。

それはウクライナ情勢を傍観していた多くの国に対し、ドル資産を保有していればアメリカの政治的都合で制裁される危険があるというシグナルを送ってしまった。

だから今や、BRICS諸国や中東の国々は貿易におけるドル決済を次々に中止している。

しかもこの動きは負債の山となったアメリカがますます国債を発行しなければならなくなっている状況で起こっている。

ジョーンズ氏は次のように述べている。

CBOの見通しによれば、大胆な対策を行わない限り、2050年にはアメリカの政府債務はGDPのおよそ250%に達する。

だが恐らくそれよりずっと前に、ドルは基軸通貨ではなくなるだろう。

ドルが基軸通貨でなくなれば、大量の財政赤字がたどり着く先は1つである。イギリスと同じように国債と通貨の両方が暴落することになる。日本も近い状況になりつつあるが。

結論

アメリカの無茶な財政赤字は、中央銀行が国債買い入れのためにドルをいくら刷ってもドルが暴落しないという前提で拡大してきた。

だがその方程式が成り立たなくなるのであれば、アメリカの赤字は誰が補填するのか。ジョーンズ氏は次のように言っている。

間違いなく米国債はデフォルトすることになる。誰もその資金を用意できるとは思えない。

アメリカがデフォルトするという状況が信じられるだろうか。だが少し前までは、どれだけ紙幣印刷してもインフレにならないという幻想がまことしやかに信じられていた。だがその幻想は打ち破られた。

次に消え去る幻想は、政府の借金は問題ないというものだろう。既にアメリカでは国債大量発行による国債価格の下落が問題となっている。

そして最後には先進国はデフォルトしないという幻想が消えてなくなるのである。以下のレイ・ダリオ氏の記事が参考になるので、そちらも参照してほしい。

米国株への長期投資を考えている人は、自分がどういう状況で何に投資しようとしているのかを考えた方が良いだろう。