米国時間2月21日にアメリカの半導体大手NVIDIAが決算を発表した。
注目のNVIDIA決算
NVIDIAの決算は市場全体に注目されていた。何故ならば、これまで米国株を引っ張ってきたのはマグニフィセント・セブンと呼ばれる7銘柄であり、中でもNVIDIAは最も株価が大きく上昇した銘柄だからである。
NVIDIAの株価動向が米国株や他の国の株、特に半導体銘柄に影響を与えるとされ、NVIDIAを保有していない投資家にも注目されていたのである。NVIDIAは筆者も去年から推奨していた銘柄であり、引き続き保有していたので注目していた。
結果どうなったかと言えば、まず第4四半期の売上高は221億ドル、1株当たり純利益は4.93ドルとなり、ともに市場予想を上回った。前年の第4四半期と比べると次のようになっている。
- 売上高: 61億ドル -> 221億ドル (+265%)
- 1株当たり純利益: 0.57ドル -> 4.93ドル (+765%)
つまり売上高が去年から3.7倍、1株当たり純利益が8.6倍になったということである(四捨五入の関係で数字がややずれている)。
この決算は凄いのか
この驚異的な成長率自体はそれほどサプライズではない。AIや暗号通貨などの複雑な計算に使われるGPUを製造しているNVIDIAがAI需要によって高成長していることはよく知られていた事実であり、それ自体はサプライズではない。
投資家にとっての問題は常に、事前予想を上回ったかどうかである。仮に大きく成長した決算だとしても、元々市場が知っていた事実であれば株価には関係がない。だから市場予想を上回ったかどうかが重要となるのである。
そして結論から言えば、売上高と純利益ともに市場予想を上回った好決算だった。だがNVIDIAの場合、それだけでは十分だとは言えないのである。
何故かと言えば、NVIDIAの決算では決算前に期待から株価が先に上昇し、発表前に好決算を織り込んでしまうということが何度も続いていたからである。
そして今回も決算を確認する前に株価が大きく上がっていた。NVIDIAの株価チャートは次のようになっている。
決算発表は株式市場が閉まった後だったので、これは決算直前の株価チャートということになる。年始から大きく上がっている(その経緯は以下の記事で説明している)が、決算前になってやや下落していることが分かる。
決算前に急激に上がり過ぎていたことに警戒したのだろう。そして決算後にどうなったかと言えば、発表後の時間外取引ではNVIDIAの株価は9.07%上がり、735.95ドルとなっている。上のチャートを見れば、決算前に下落した分を単に取り戻しただけの値動きということになっている。騒ぐだけ騒いでこれだけの話だったということである。
NVIDIAの株価見通し
結局、NVIDIAの株価は決算を踏まえた上で割高なのか、割安なのか。時間外取引の株価と決算で確定した1株当たり純利益を使って計算すると、NVIDIAの株価収益率は62倍となる。
S&P 500の株価収益率が26倍なのでこれだけ見ると割高に見えるが、これまでにも解説してきた通り高成長銘柄の株価収益率は利益の成長によって急速に改善される。
アナリスト予想の平均によれば、NVIDIAのここから1年の1株当たり純利益は22.1ドルになると想定されている。この数字と時間外取引の株価を使って計算すると、株価収益率は33倍になる。S&P 500と比べるとやや割高だが、IT企業としてはそれほどでもない。だが以下の記事で割安過ぎておかしいと書いた、株価上昇前のような状況ではなくなってしまった。
結論
ということで、いつも通り好決算を出し、いつも通り株価には先に織り込まれていたNVIDIAの決算だった。
以前書いたように、長期投資としてはNVIDIAは引き続き面白い銘柄と言える。
だが有り得ないほどの割安水準ではなくなったので、短期的な推奨はここまでとしておこう。半年ほどで60%もの利益をもたらしてくれた非常に良い投資だった。
NVIDIAに懸念があるとすれば、インフレ再燃で金利が上がるシナリオが見えてきたこと、そして遠からずアメリカ経済には景気後退が待ち受けていることである。
どちらもグロース株には致命的な影響を及ぼすことになるので、長期保有する場合にもマクロリスクはきちんとヘッジしておくことだろう。NVIDIAの長期見通しについてはスタンレー・ドラッケンミラー氏の記事を参考にしてもらいたい。