ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用し、1992年のポンド危機でポンドの空売りで巨額の利益を上げたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏がHow Leaders Leadのインタビューに答え、投資の仕事について語っている。
ドラッケンミラー氏にとっての投資
ドラッケンミラー氏は何十年ものキャリアの中で年率30%以上のリターンを上げ、しかも1年たりとも損益がマイナスになったことがない優れたヘッジファンドマネージャーである。
そのドラッケンミラー氏は投資という仕事をどのように考えているのか。彼は次のように語っている。
投資とは常に世界をパズルの集まりだと考えてそれを解くことだ。
世界のすべての出来事が別の何処かの利害関係に影響している。だから投資家は世界で起きていることに常に気を配り、パズルを問いて未来を予想する。今どうなっていて、次にどうなるかだ。
資産運用とは未来を予想する仕事である。この会社は大きくなる。この国は成長する。だからその会社や国に賭けるのである。
成功すれば利益を得、失敗すれば損失を出す。シンプルだが、能力のある人間が報われるビジネスでもある。
ドラッケンミラー氏はそんな投資という仕事のことを次のように考えている。
未来を予想して間違っていたら、それはあまり楽しくないだろう。
だが他の誰も予想していなかったことを予想してそこに大きく賭け、それが大成功した場合、重要なのは大金が儲かることじゃない。問題を解いてそれが当たっていたという充実感が重要なんだ。
仕事を始めたまさにその日から投資の仕事が大好きだ。
仕事を好きであること
ドラッケンミラー氏の人生にとって、自分の仕事が好きだということが非常に重要だという。彼は次のように述べている。
わたしは週に60時間働きたい。昔はもっと多かったが。それで仕事が楽しくなかったら酷い人生だ。仕事が1週間のどれだけを占めているかを考えてみるといい。
筆者も若い人々に仕事の選び方について聞かれることがある。彼らの多くはほとんど年収だけで仕事を決めている。好きでもない仕事に人生の大半を捧げるというだけでも大惨事なのだが、残念ながら問題はそれだけではない。
ドラッケンミラー氏は次のように続けている。
何かを楽しいと思える人は、思えない人よりもそれが上手くなるだろう。
投資は難しい商売である。金融市場では世界中の人々が未来を予想しようとしている。単に盲目的に株式を買って放置しておくだけでは、利益を出すことはできない。
金融市場における競争
ドラッケンミラー氏は同時に、投資は厳しい商売だとも語っている。彼はこう言っている。
投資の世界には隠れ場所はない。どれだけ言い訳しようとも、損益は常にはっきりしている。
ゴルフなら跳ね方が悪かったとか何とか言い訳が出来るかもしれないが、投資で失敗すれば逃げ場所はない。
だがそれは利点でもある。投資家は自分の投資が損を出し始めたとき、自分の投資が何か間違っているのかと考え始める。
考えることが好きな人間であれば、その投資で損を出したとしても次の投資ではより良い結果を残すことが出来るだろう。
だが投資において重要なのは、常に対戦相手がいるということである。あなたが金融市場で何かを買う時には、誰かがそれを売ろうとしているのだということを考えなければならない。
ドラッケンミラー氏は次のように言っている。
何かを買うときには、常にそれを売ろうとしている人が存在する。だから相手が手強い時には特に、ちゃんと勉強をしてから投資に挑むべきだ。
誰かがそれを売り、あなたがそれを買っている。あなたはそれが良いものだと思っているが、売っている方はそんなものは持ちたくないと考えている。どちらが正しいのか? 将来それが上がるか下がるかによって、どちらかが損をし、どちらかが得をするのである。
その勝負はどのように決まるのか。売買しているものが良いものなのか悪いものなのか、その中身をより良く知っている投資家が勝つのである。
だから投資について、自分の投資している銘柄についてしっかり勉強すべきである。そしてしっかり勉強する投資家になるためには、未来を予想するという投資の仕事が好きでなければならない。そうでなければ投資で長期的に利益を出すことはできない。
考えてみてもらいたいことがある。そうでない投資家、盲目的に何でも買ってくれる投資家がもし金融市場に居たとすれば、経験と知識のある他の投資家はどう思うだろうか。あなたが盲目的な投資家なら、あなたはそういう投資家から自分のよく知らない何かを買わされているのである。
ウォーレン・バフェット氏は次のように言っていた。
ポーカーを始めて30分経っても誰がカモか分からないなら、あなたがカモなのだ。