引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。
今回はジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを紹介する。
米国株買い増し
今回の開示は12月末のポートフォリオだが、ドラッケンミラー氏のポジションはどうなっているのか。
結論から言えば、ドラッケンミラー氏は米国株を買い増している。Form13Fに掲載されているポジションの総額は、前回9月末の28億ドルから34億ドルに増額されている。
年末までに買い増したわけだが、その後米国株はどうなっているかと言えば、S&P 500のチャートは次のようになっている。
ドラッケンミラー氏の相場観
ドラッケンミラー氏は何故米国株を買い増したのか。まずは彼のこれまでの相場観をおさらいしてみよう。
ドラッケンミラー氏のこれまでの米国株の相場観は微妙なものである。基盤となっているのは、インフレ高金利の時代においては株価が長期的に上昇することがないという考え方である。
だが一方で、ドラッケンミラー氏は株価が即座に下落するとも考えていない。株価が下落するのは景気後退の半年ほど前であることが多いが、ドラッケンミラー氏は景気後退は来年がメインシナリオだと考えているからである。
だからドラッケンミラー氏は、株価が下落トレンドに入るにはまだ早いと去年末の段階では考えていたのだろう。特に、その頃は筆者や他の著名投資家たちが景気後退よりもインフレ加速リスクの方が高いのではないかと考え始めた時期であり、ドラッケンミラー氏も減速よりはアメリカ経済の過熱リスクを考えて株式を買ったのかもしれない。
ドラッケンミラー氏の個別株選択
ではポートフォリオの中身を見てみよう。ドラッケンミラー氏は、米国株が長期的に良くて横ばいであり、しかも景気後退になれば大幅下落のリスクもあると認識しながら、米国株にどのように投資していたのか。
ドラッケンミラー氏が買っていたのはAI銘柄であり、特にNVIDIAとMicrosoftである。特にNVIDIAは長らくドラッケンミラー氏の最大ポジションである。
彼はAI銘柄について以下の記事で次のように語っていた。
歴史を見れば、景気後退でも持続的に非常に良い決算を出せば、株価は問題ないということが分かる。
AIとその影響力に関するわたしの判断が正しければ、これがわたしが思うくらい大きなものなら、NVIDIAは10ヶ月程度ではなく2年か3年は持っていたいと考えている。だが実際には恐らくそれより長くなるだろう。
NVIDIA
そしてNVIDIAは筆者も買っている銘柄だが、これは本当に大当たりだった。株価チャートは次のようになっている。
特に最近の株価急上昇については、上昇の初日にNVIDIAが有り得ないほどの割安水準であることを以下の記事で指摘しておいた。
ここ最近の株価上昇でその割安さがようやく修正されつつある。
今回の開示によるとドラッケンミラー氏は、NVIDIAの株式を3.0億ドル、株価上昇に賭けるコール・オプションを2.4億ドル分保有している。前回の開示では株式の買いを3.8億ドルだけだったので、コール・オプションという形ではあるが最大ポジションのNVIDIAを更に買い増したと言えるだろう。
Microsoft
また、2番目に大きなポジションはMicrosoftであり、こちらもAI銘柄である。こちらもNVIDIAほどではないが上がっている。
結論
ということで、ドラッケンミラー氏の米国株買いポジションは絶好調である。筆者もNVIDIAには大きく儲けさせてもらった。
ちなみにNVIDIAは米国時間21日に決算発表を迎えるが、筆者はあまり良い見通しを持っていない。
それは決算内容を憂慮しているからというよりは、直近数回の決算発表が、内容が非常に良かったにもかかわらず直後の株価が振るわなかったからである。
決算前に急上昇して内容を織り込む動きも前回までの決算に似ている。つまり期待が高過ぎるのである。結果が良くても株価上昇がそれほど期待できないという状況で、果たして良い結果とはどういう結果が考えられるのか。
NVIDIAについてはそもそも短期的な値幅取りが出来るほどの割安水準ではなくなってしまっているので、いずれにせよ長期保有を考えた投資のみを残すべきだろう。
NVIDIAも割安感が薄くなってきたが、米国株全体は空前絶後の割高状態である。筆者の米国市場への警戒感はかなり高まってきているが、それは前回の記事に書いたのでここでは繰り返さない。