DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社のウェブキャストでアメリカの景気後退とドル相場、そしてコモディティ市場について語っている。
現金給付とドル相場
ドル相場についてはコロナ直後からの宿題が残っているのを読者は覚えているだろうか。現金給付によって印刷したドルをばら撒いたにもかかわらず、インフレと金利上昇によって為替相場ではドルがむしろ上がったということである。
ドルをばら撒いてドル相場が上がるという矛盾は、インフレ対策でアメリカの金利が高く維持される限り続いてゆく。短期的には為替相場は高金利に反応してドル高となるからだ。
だが矛盾はいずれ解消されなければならない。その終わりは、インフレが退治されて金利が本格的に下落する瞬間である。
その瞬間はまだ来ていない。アメリカの長期金利は次のように推移している。
だがガンドラック氏はアメリカの景気後退を予想している。そうすれば金利は下がるだろう。しかも彼の景気後退のタイミング予想は、筆者や他の識者のものより早い。
それはドルの下落タイミングもガンドラック氏の予想によれば早いということである。彼は次のように述べている。
次に景気後退が来ればドルは下がると予想している。景気後退が来てドルが下がれば、やるべきことは新興国株式とコモディティを買うことだ。
新興国株式というのは、ドルを基準に考えるアメリカの投資家の観点である。ドル以外の通貨で外国株を持てば、ドル安によってドル換算では利益が得られるということである。
そして貴金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティもドル建てで取引されているので、ドルが下落すればコモディティのドル建て価格も上がるだろう。
景気後退で緩和再開
ガンドラック氏が見ているのは、景気後退が来てアメリカは緩和を再開することになり、それがインフレ第2波を呼ぶというシナリオである。
ちなみにこのインフレ第2波シナリオについては、日本人のほとんどがそもそもインフレ第1波にも気付いていなかった2021年に、筆者が誰よりも早く指摘しておいた。
その後半年ほど遅れて経済学者のラリー・サマーズ氏などが指摘し始めることになる。
そして2024年、ガンドラック氏によればその第2波が来るタイミングがついに近づいているということである。
結論
だがその前にまず景気後退だろう。筆者がインフレ第2波を予想しながらまだコモディティを本格的に買えない理由は、景気後退が来ればコモディティはまず下落するからである。
そしてその後の緩和によってコモディティは高騰することになるだろう。
だからガンドラック氏は次のように述べている。
短期的には、景気後退が来るためコモディティに強気な見方は持っていない。だが長期的にコモディティ指数がどうなってゆくのかを見ておく必要があるだろう。
この相場観は、ガンドラック氏がアメリカの長期金利は景気後退でまず下がってその後上昇すると予想していることとパラレルになっている。だからそちらも参考にしてもらいたい。
また、問題はコモディティのうちどの銘柄を買えば良いかである。貴金属か、エネルギー資源か、農作物か? これについては以下の記事を見てもらいたい。