世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でBusiness Todayのインタビューに答え、ウクライナやパレスチナで戦争が起きている状況下でインド経済に強気の予想を行なっている。
2024年の地政学リスク
2024年の金融市場を占う上で、地政学的状況は避けて通れない話題である。ダリオ氏は次のように述べている。
ヨーロッパで戦争が起きている。中東で戦争が起きている。
2022年にはウクライナで、2023年にはパレスチナで戦争が起こった。
これらの戦争はアメリカや日本の金融市場にはまだほとんど影響を与えていないが、ダリオ氏はこれらの戦争が広がる可能性を警告し続けている。
そして実際その後、アメリカとイギリスなどの連合軍がイエメン南部を支配するフーシ派と実質的な戦争状態となった。
戦争における資産運用
戦火は明らかに広がっている。遂にアメリカが実質的に参戦していることを誰も懸念していないが、戦火は実質的にアメリカまで広がっている。
もし状況がこのまま拡大するのであれば、投資家にとってはどの国に投資すべきなのかという問題が生じる。過去の戦争の時期ではどうだったか。過去の相場の研究で知られるダリオ氏は次のように述べている。
戦争では戦勝国と敗戦国が生まれる。敗戦国の状況は酷い。だが戦勝国も中立の国々ほど状況が良いわけではない。中立の国々が常により良いパフォーマンスを発揮する。
例えばダリオ氏の意見では、第2次世界大戦後に米国経済が繁栄したのは2回の世界大戦の多くの期間においてアメリカが参戦していなかったからだ。戦勝国であるはずのイギリスやフランスの経済は何十年もの戦争で完全に疲弊していた。その辺りの経緯はダリオ氏の著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で説明されている。
中立国であるインド
ダリオ氏は同じような状況が始まることを予想している。彼は次のように述べている。
それが今起きようとしている。例えば紛争を避けてインドに事業を移そうとする動きがある。
インドはいくつかの理由で非常に特別な状況にある。大きな理由としては過剰な債務を負っていないこと、そして1980年頃に鄧小平が実権を握った時の中国の状況に非常に似ていることだ。モディ首相という優れたリーダーがいる。
インドはウクライナにおいてもパレスチナにおいても中立の立場を貫いている。無関係なのだから当たり前である。だが一方で、何のメリットもないのにイスラエル寄りの立場を取ってイスラエルによるガザ市民殺害を支持していると他国に思われている日本のような国もある。この状況に何の得があるのか。
外交の手腕は非常に大切である。
また、ダリオ氏はインド経済内部の状況も良好だと見ている。彼は次のように述べている。
教育と十分な資金という組み合わせのお陰でインド経済は離陸しようとしている。インドでは正しい投資が行われており、技術に対する姿勢も正しい。
離陸というのは、優れたリーダーシップと十分な資本のもとで生活水準と生産性が上昇しようとしているということだ。
インドの最新の実質GDP成長率は4.4%となっている。結果としてインド株は非常に好調である。インドの株価指数BSE Sensexは次のように推移している。
他の国の株式市場と比べても、コロナ後のインド株は世界有数の好パフォーマンスを発揮している。ダリオ氏によれば、これが「離陸」段階だということだろう。
だがインドはまだまだ海外投資家への規制が厳しい国である。ダリオ氏はこうも言っている。
海外投資家の観点から言えば、金融市場がもっと開放され近代化されてくれば良いのだが。だから改善すべき点はある。だがインド国民全体にとってはインド市場は魅力的な投資環境だろう。
金融市場の改革が進み、わたしや他の機関投資家などももっとインドに投資できるようになれば良いのだが。
しかしインド株ETFは存在するので、インドに投資したい個人投資家にとってはそれほど困ることでもないだろう。戦争ということを考慮しなければならない投資環境が近づいているのかもしれない。
世界秩序の変化に対処するための原則