DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社ウェブキャストで金融系の雑誌のドル買い煽りを皮肉っている。
コロナ後のドル上昇
アメリカでコロナ後に行われた現金給付によって物価が高騰し、結果として金利が上がったのでドルも上昇したことはまだ読者の記憶に新しいだろう。
このことは逆説的に聞こえるかもしれない。何故ドル紙幣をばら撒いたらドル紙幣の価値が上がるのか。だがやはり為替市場は短期的には金利に左右されるので、ドルの金利が上がる以上はドルも上がるのである。
そしてコロナ後のドル高が勢いに乗っていた2022年、ドル相場を取り上げた2つの雑誌がある。BARRON’SとBloomberg Businessweekである。
ガンドラック氏は2022年10月10日のBARRON’Sの表紙と、10月3日のBloomberg Businessweekの表紙を取り上げている。
BARRON’Sの表紙には「力強いドル紙幣」と書かれている。もう一方のBloombergの表紙にはドルマーク($)が大きく書かれ、その上下に「止められない」「止まらない」と書かれている。
そして2022年10月にドル相場では何が起こったか? ドル円のチャートを掲載しよう。
ガンドラック氏はこう述べている。
ほとんど冗談だが、Bloomberg Businessweekの表紙には「Fed(連邦準備制度)はドルを暴れまわる鉄球に変えてしまった、そしてそれが止まる気配はない」と書かれている。
だがそれはまさにドル指数が天井を付けた週だった。
非常に優秀な金融雑誌
ガンドラック氏は次のように纏めている。
金融系の雑誌の表紙のタイミング予想はほとんど常に完璧に間違っている。
これはアメリカの雑誌に限った話ではない。日本でもドルへの投資が少し前に流行ったはずだ。そして人々がドルに注目し始めたのがどういうタイミングだったか思い出してほしい。
何故こうなるのか。筆者は必ずしもこうした雑誌の編集者の予想が下手なのだとは思っていない。
何故ならば、彼らは別に予想をしているわけではないからだ。彼らの仕事は雑誌を売ることであり、予想を当てることではない。
そして投資の話でどのような話題を載せれば雑誌が売れるかを考えてみれば、何故こうなるのかが分かる。一般の読者が簡単に釣られそうな話題と言えば、「この銘柄は上がっている、乗り遅れるな」だろう。
だが世界最大のヘッジファンドを創業したレイ・ダリオ氏は、投資における最大の間違いについてこう語っていた。
これまで良いパフォーマンスを出している投資を、割高だと考えずに良い投資だと思いこむこと。
それは米国株への根拠のない盲信にも同じことが言える。
だからこういう話に釣られる人に、間違っても「この銘柄は物凄く下がっている、だから買いだ」と言ってはならない。彼らは絶対に手を出さないだろう。
だがプロの投資家は安く買って高く売ることを生業としている。だから彼らの興味を引く話題とダリオ氏の意見は当然に真逆になるのである。
ガンドラック氏は個人投資家にこう助言している。
雑誌の表紙に注目することだ。驚くほど優秀な投資判断の基準になってくれるだろう。
彼らも完璧ではない。だがわたしの投資予想よりも優秀かもしれない。私の予想は70%の確率で当たる。人はわたしの予想のここが間違った云々と言うが、その通りだ。わたしの予想は30%の確率で間違う。
だがこうした雑誌はそれよりも当たるのではないか。こうした雑誌は80%以上の確率で間違うので、表紙には注目しておくべきだ。
個人投資家は金融市場における「人気」と「割高」の間に差があるのかどうかについてよく考えるべきである。