リーマンショックを予想的中させたことで有名なPaulson & Coのジョン・ポールソン氏が、話題のギリシャ経済についてCapital Linkの会合で語っている。
絶好調のギリシャ経済
コロナ禍とその後のインフレによって多くの国の経済が減速しつつある中、ギリシャ経済は絶好調であると言える。
2010年からの欧州債務危機ではデフォルトの瀬戸際まで行ったギリシャ経済がここまで立ち直ったのは、2019年に選出されたミツォタキス首相の経済政策が奏功しているからである。ここまでの話は前回の記事で説明している。
ギリシャでは株価も絶好調なのだが、そのギリシャ経済に注目しているヘッジファンドマネージャーがいる。リーマンショックにおいて原因となったサブプライムローンを空売りしたことで有名なポールソン氏である。
ミツォタキス首相の経済改革
ポールソン氏は次のように述べている。
ミツォタキス首相のリーダーシップのもとで行われているギリシャ経済の変革は素晴らしい。
ミツォタキス氏が何をしたかと言えば、政府債務を減らし減税を行なったのである。そして規制緩和によって海外からの投資を受けやすいようにした。ヨーロッパと中東の間に位置するギリシャに興味を持つ国は多い。政府の行なう無駄な規制を取り除くことで、そうした国から資金を流入しやすいようにしたのである。
ポールソン氏は次のように言う。
かつてギリシャ経済は酷い状態で、皆も知っているように失業率は上昇し、世界経済から切り離されてばらばらになるリスクがあった。
だが負債に依存していたギリシャ経済は、ミツォタキス氏の時代から生まれ変わっている。ポールソン氏はこう続ける。
大きく変わったのは政府だ。
大きな政府と小さな政府
ミツォタキス首相の目指しているのは、税金も政府支出も少ないいわゆる「小さな政府」である。それは例えば自民党やEUが目指しているような、政治家の裁量で扱える税収を増やす「大きな政府」とは真逆のものである。
そしてどちらの方が国民の利益になるかは明らかである。ポールソン氏は次のように言う。
過剰な規制、税の厳しい取り立て、大きな所得の再配分などを行なういわゆる「大きな政府」にこだわり、生産ではなくいくら受け取りいくら支出するかに焦点を置くような政府が失敗することは分かりきったことだ。
日本人に聞かせてやりたい言葉ではないか。そしてポールソン氏は次のように続ける。
経済成長、効率の良い規制、公平で軽い税制、ビジネスやイノベーションへの支援などに集中し、国民から受け取るのではなく国民の仕事が報われるようにする政府こそが、成功する政府だ。そして今のギリシャ政府にはそれがある。
ギリシャ経済はどう変わったのか。ポールソン氏は具体的な政策の話もしているが、それについても新たな記事で取り上げたい。
だが筆者がギリシャの話を取り上げて言いたいのは、これは単にギリシャだけの話ではないということである。例えばアルゼンチンも、オーストリア学派の経済学者であるミレイ大統領のもとで政府債務を削減する政策を行おうとしている。
政府支出を良しとするジョン・メイナード・ケインズ氏の経済学ではなく、政府の汚職を抑えることに主眼を置いたフリードリヒ・フォン・ハイエク氏の経済学に近い経済政策を行なう国が現れ始めていることは偶然ではない。
だがその国々がギリシャとアルゼンチンであることは、主要国の国民にとって悲劇的な事実かもしれない。それらの国はともにインフレ政策のやり過ぎで経済が潰れた国であり、インフレ政策はインフレを導いて終わるという簡単な事実に気付くために、国の経済は一度落ちるところまで落ちなければならないということを意味しているからである。