ガンドラック氏: パウエル議長の米国経済への自信は一時的

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。

高金利とアメリカ経済

インフレ抑制のために行われているFed(連邦準備制度)の高金利政策により、アメリカではインフレ率は下がってきている一方で現状そこまでの景気減速とはなっていない。

アメリカのインフレ率は以下のように推移している。

失業率は上がりつつあるが、まだそれほどは上がっていない。最新月はむしろ下がっている。

パウエル議長には2021年には既に7%まで上がっていたアメリカのインフレを「一時的」なものだと主張し状況を悪化させた過去がある。

だがその後「インフレは一時的」の意見を撤回し、利上げを行なったためにインフレはある程度まで抑制され、その状況に安堵している様子が記者会見などからも分かる。

ソフトランディング期待

しかしガンドラック氏はそのパウエル氏に皮肉なコメントをしている。彼は次のように言っている。

パウエル議長は今の状況に自信を持っているだろう。だがそれは一時的かもしれない。

何故ならば、経済には先行指標と遅行指標があり、利上げに真っ先に影響される金利や原油価格やインフレ率などは先行指標で、景気を示すGDPや失業率は遅行指標だからである。

先行指標の状況が良いからと言って、遅行指標があとから悪い結果にならないということにはならない。何度も引用しているが、20世紀最大の経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が著書『貨幣論集』のなかで詳しく説明している。

ガンドラック氏も遅行指標の悪化が来年起こると想定している。

パウエル議長は何かを学んだか

だがそれでもガンドラック氏はパウエル議長は2021年にインフレを放置した失敗から何かを学んだと見ている。彼は次のように言っている。

パウエル氏は先行指標と遅行指標というものに多少慣れてきたようだ。有難いことに彼は過去3年から何かを学んだように見える。

だからパウエル氏はインフレ率が目標の2%まで落ちてくるよりも前に利下げに転じようとしている。それが株式市場にプラスの影響を与えている。

一方で、ガンドラック氏は株価は来年には下落に転じなければならないと考えている。

今のところ上手く行っているように見えるパウエル氏の金利の舵取りは成功するのだろうか。筆者の意見は勿論、金利の操作は中央銀行には無理な仕事であり、金利水準は市場に任せるべきだというものである。中央銀行がなければ人為的なインフレは起こらないし、中央銀行がなくとも発生するインフレは中央銀行には防げない。

このような簡単なことも多くの人には分からないのである。誰が中央銀行が存在する意義を経済学的に妥当な議論で説明できるだろうか?


貨幣論集