DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、来年のアメリカの利下げと実体経済について直感とは逆のことを話している。
来年の利下げとアメリカ経済
前回の記事でガンドラック氏は、Fed(連邦準備制度)が先週のFOMC会合で来年3回の利下げを仄めかしたことが短期的には株価にプラスになっていると語っていた。
だがこれから政策金利が下がってくることがアメリカの実体経済にどういう影響を及ぼすかについては、ガンドラック氏は正反対のことを言っている。
ガンドラック氏は次のように述べている。
低金利の状態から利上げを始めたことが金融市場に大きな被害をもたらしていないのと同じように、直感に反するかもしれないが、高金利の状態から利下げを始めることは経済に悪影響を与えるだろう。
どういうことだろうか? これはガンドラック氏が金利と住宅価格について言っていることと同じである。彼は高金利にもかかわらず上昇を続ける住宅価格について次のように解説していた。
住宅ローン金利がこれほど大きく上昇したのだから住宅市場が難しい状況になると多くの人は考えた。
だが実際には逆のことが起きた。住宅の売り手が住宅を売らなくなったので供給が細り、住宅価格は全国平均で新たな高値を更新した。
そしてガンドラック氏は低金利で借り換えが容易になり、人々が住宅を手放すことで住宅価格が下がると予想している。ローン金利低下で住宅が買いやすくなるとする一般的な考え方とは逆の発想である。
だがガンドラック氏は同じ記事で次のようにも言っていた。
金利上昇の環境下では、金利低下の環境しか経験したことのない人が自動的に思いつくこととは違ったやり方で物事は進んでゆく。
金利低下でアメリカ経済減速?
この理屈でガンドラック氏は、低金利でアメリカ経済がむしろ減速してゆくとする理由を次のように説明する。
何故ならば、利下げがこれから来るのであれば人々は金利が下がるのを待つ可能性があるからだ。そしてその行動は経済の減速を後押しするだろう。
将来の金利低下を人々が予想すれば、今ではなく金利が低くなってから消費や投資をしようと考え、経済が落ち込むという考え方である。
逆に言えば、金利上昇の局面においては金利が上がる前に住宅や自動車をローンで買ってしまおうという動きがあったということになる。その話はある程度理にかなっている。
結論
もちろん単純に低金利イコール経済減速と考えるわけにはいかない。しかし低金利にはそういう側面もあるということ、そしてインフレ経済においてはこれまで40年のデフレ経済では起こらなかったことが起きるということを理解しておく必要があるだろう。
そして更に問題なのは、この金利低下時の買い控えはジョージ・ソロス氏が自著『ソロスの錬金術』で解説しているところの自己加速的トレンドだということである。
金利低下が買い控えの原因となり、買い控えが経済減速によりまた金利低下の原因となる。それが繰り返され2つの要素が互いを違いに加速させてゆく。ソロス氏の理論では、トレンドが自己加速的である限り、そのトレンドは別の大きな要因がそれを転換させるまでひたすら進んでゆく。
デフレからインフレという巨大なトレンド転換によって、本当に柔軟な発想が求められる局面に来ているのだろう。
ソロスの錬金術