アラブ首長国連邦で開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締結国会議(COP28)において、日本を含む21ヶ国が2050年までに世界全体の原子力発電の設備容量を3倍にすることを目指す宣言に賛同した。
脱炭素政策で化石燃料を減らすことに囚われている西洋諸国が原子力発電に頼らざるを得ない状況が鮮明になった。
脱炭素政策と物価高騰
何年も前から西洋諸国は二酸化炭素を発生させる火力発電などの発電方法を抑えようとしてきた。
いわゆる脱炭素政策とは単に水力発電や風力発電など二酸化炭素を直接発生させない発電方法を増やすというだけではなく、原油や天然ガスなどの採掘企業への融資に制限をかけるなどして化石燃料を採掘できないようにする政策であるということは、ここでも何度か指摘してきた。
結果どうなったかと言えば、エネルギー価格が高騰した。2021年からの物価上昇の原因はまず何よりも世界的に行われた現金給付だが、次の原因を挙げるとすれば、それはウクライナ情勢ではなく脱炭素政策である。
原油などの生産量を無理矢理抑えたために原油価格が上がったのである。そうなるのは当たり前である。それで脱炭素政策を主導してきたバイデン大統領などは中東諸国に原油を生産するように頼まなければならない状況に追い込まれてきた。彼らは原油生産を減らしたかったのではなかったのか?
原油の生産量を減らせば原油価格が上がるのは当たり前である。しかし風力や水力ではエネルギーを賄いきれない。(そもそも水力は自然破壊も良いところである。)
だが西洋の人々にとって脱炭素はもはや宗教のようになっている。筆者には西洋人の友人が多いのでそれをよく知っている。彼らはフランシスコ・ザビエルよろしく新しく会った人々に脱炭素を布教しようとする。欧米の人々に多少以上の関わりがある人ならば経験があるだろう。
彼らの脱炭素への熱意は、エネルギーを消費しないためならば風呂にも入らないほどである。筆者のでっち上げではない。ドイツの政治家が実際にそういう発言をしている。欧米人は元々たまに風呂に入らないので、あまり気にならないのだろう。
そもそも世界のエネルギー供給の大部分を賄ってきた化石燃料をなくすという発想にかなりの無理がある。
二酸化炭素は排出したくない。だがエネルギーは欲しい。肉は食べたくないが肉の形をした肉味のものは食べたいヴィーガンと少し似ている。あるいは努力せずにお金が降ってきて欲しいMMTにも似ているだろうか。すべて同じ穴の狢である。
脱炭素政策と原子力発電
そんな彼らが何に飛びつくかということを、筆者は予想しておいた。それが原子力発電である。そして原子力発電にはウランが必要になる。
原子力発電は2011年福島の事故以来日陰で過ごしてきた。ドイツ人が国内のすべての原発を停止させる決定をして以来、ウラン価格も地を這ってきた。
だが西洋人の脱炭素への熱意は原子力嫌悪を上回るだろうということを筆者は見越しておいた。今やドイツ人でさえも脱原発を後悔している。
そして人々は徐々にウランへと注目してきている。それでウラン価格は回復した。筆者が推奨した7月から見てもかなり上がっている。はっきり言って大当たりである。
そしてここに来てCOP28である。2050年までに原子力発電容量が3倍になれば、単純計算でウランもそれだけ多く必要になる。
結論
これは原子力発電が良い悪いの問題ではない。脱炭素な人々がイデオロギーの世界を転がってゆく様子を予想するだけで金が手に入るという金融市場の仕組みである。
ちなみにウラン投資はそれこそ今後10年から50年を見越した長期投資だから、今年の好調な相場にそれほど一喜一憂しないことだ。来年に世界的な景気後退が来ればウラン相場もその影響を免れない。
だがポートフォリオ全体の楽観悲観は別として、長期的に成長を期待できる個別銘柄を持っておくことは重要である。相場全体が停滞する時もそれだけは上がるからである。