投資家ジム・ロジャーズ氏、娘の投資教育について語る

引き続き、Morningstar Indiaによるジム・ロジャーズ氏のインタビューである。今回は優れた投資家になるための道のりと、娘への投資教育について語っている部分を取り上げたい。

優れた投資家になるために

優れた投資家になるためにはどうすれば良いだろうか。

ロジャーズ氏は前回の記事で、金融業界の立派な肩書を持った人の大半は相場について何も知らないということを語っていた。

だからロジャーズ氏は彼らの批判を気にしない。むしろ批判が多ければ多いほど自分が正しい確率が高いとすら言っている。

一方でロジャーズ氏は相場が自分の予想に反する動きをしたとき、そこから学ぶことを知っている。ロジャーズ氏は自分の失敗を例に挙げてそれを説明している。

1980年のある金曜日にわたしは原油を空売りした。

原油が高騰していたので金曜の夕方に空売りしたが、その週末にイランとイラクが戦争に突入した。

1980年から1988年のイラン・イラク戦争のことである。

戦争を予期することは難しい。各国の諜報機関がそれを予期しようとして必ずしも成功しないのだから、一投資家にそれを求めるのは酷だという意見もあるかもしれない。

だがロジャーズ氏は次のように言う。

土曜日に両軍がいきなり戦争を思いついたわけがないから、少なくとも誰かが戦争の準備をしていたわけだ。

誰かは十分なリサーチをしてイランとイラクで何かが起こっていることを察知していたかもしれない。わたしはそのリサーチをやらなかった。

軍はそれを機密にしたがるだろうから予想することは不可能かもしれない。だがイランの軍もイラクの軍も巨大だから、誰かは知っていたはずだ。わたしはそうではなかった。そしてお金を失った。

それはわたしが愚かで十分なリサーチをやらなかったからだ。

ロジャーズ氏の失敗の原因は何処にあっただろうか。少なくとも、原油価格の下落に賭けるためには有事の原油高騰リスクについては常に考えておかなければならない。何度も言っているが、ウクライナ戦争も日本人の言うように突如始まったものではなく、そうなるべき状況が元々存在した上で始まったものだからである。

だから戦争が起こりそうな下地があるかどうかはリサーチできたはずである。ロジャーズ氏がイラン・イラク戦争を予期できなかったことが悪いとは言わない。だが今言ったようなリスク管理の方法を取らなかったことは、次に改善できる失敗だと言えるだろう。

失敗から学ぶこと

だからロジャーズ氏は次のように言う。

投資で失敗する原因はいつも自分が十分なリサーチをしていなかったからだ。

そしてロジャーズ氏は司会者に、自分の娘が何か馬鹿げた投資を持ち出してきて、それに投資したいと言ってきたらどうするか、どうやって止めるかと聞かれ、次のように述べている。

まだそういう状況になったことはないが、子供が失敗しそうになっている時には、子供に失敗させてやると思う。ただ、致命的な失敗にならないように配慮するだろう。

何故ならば、人は失敗から学ぶからだ。

最近の風潮として、子供に失敗させてやれない親があまりに多い。そして子供は子供の頃に失敗できなかったので、大人になってから酷い失敗をすることになる。

ロジャーズ氏は良い父親をやっているのではないか。彼の話は投資以外の話題でも良い話が多い。