ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたジム・ロジャーズ氏が、Morningstar Indiaのインタビューで他人が自分の意見に反対している時にどう思うかについて語っている。
キャリア初期のロジャーズ氏
ロジャーズ氏は金融業界でキャリアを始めた時のことを思い出している。彼は次のように述べている。
わたしが最初にウォール街に入ったとき、わたしは何も知らなかった。
ウォール街がニューヨークにあること、1929年に何か悪いことが起こったということくらいは知っていたが、他には何も知らなかった。株式と債券が違うものだということさえ知らなかった。当時のわたしは完全に無知だった。
本物の才能を持った金融家が知識を身につけ、頭角を表すのは30歳前後だろうか。ロジャーズ氏がソロス氏とクォンタム・ファンドを始めたのも、レイ・ダリオ氏がBriddgewaterを創業したのもその頃である。ロジャーズ氏はたまに初期のクォンタム・ファンドの話をしている。
だがそれでもまだ30歳である。若いロジャーズ氏が知識を身につけ、頭角を表し始めた時にも、周りには年上でより経験を持った多くの業界人が居たはずだ。彼らが自分の意見に反対しているとき、ロジャーズ氏はどう思ったか。彼はこう述べている。
年上の人やより経験のある人が何かを喋っている時、彼らは自分の話している事柄についてよく知っているものだと考え、彼らがわたしの意見に反対するとき、それに影響されたこともある。
だが最終的に学んだことは、彼らは別にわたしより多くのことを知っているわけではなく、彼らの考えを気にする必要はないということだ。だが最初の頃は彼らの意見に影響された。
多くの人はこう考える。「この人は銀行に勤めていて、自分に投資信託を奨めてくれている。自分よりも知識も経験があるからこの人の意見は正しいはずだ」「金融庁が株式の長期分散投資を奨めている。金融庁の言うことだからリスクも低く安全なはずだ」。だがそんな事実はまったくない。微塵もない。皆無である。
実際には、銀行員は銀行の方針で売れと言われたものを売っているだけであり、NISAはアベノミクスの頃、国民に株式を買わせて株価を上げることで国民の貯金を支持率の足しにしようという目的で作られたものであって、金融庁の小役人どもは偉そうにしながらも政治家には頭が上がらないので、ただ政治家に忖度するためにそれを推進しただけなのである。
そして株式は長期分散投資すれば安全でリスクの低い投資になるという金融庁の主張には、実際には何の根拠もない。ここでは何度も説明している。
結論
他人の意見、肩書のある人の意見とはせいぜいそういうものである。意見を言う人の中で、自分の喋っていることを本当に理解している人は少ない。
だからロジャーズ氏は次のように言っている。
わたしが学んだのは、反対意見は多いほど良いということだ。多いほど自分が正しい確率が高い。
多くの人があなたを批判していたり、あなたは間違っていると言っている時、ほとんどの場合あなたは多分正しい。あなたは正しい道の上にいる。
だから多くの人が反対しているとき、それはわたしにとって良いサインだ。
これは投資に限らず、多くのことについて言えるだろう。例えば筆者はウクライナ情勢に関する意見を、侵攻当初からほとんど変えていない。
だが国際世論は徐々に筆者の側に寄ってきている。ウクライナ支援の予算は米国議会を通らなくなった。それまでに1年半掛かってはいるのだが。
コロナワクチンについても同様である。筆者は元々、5年から10年かかるものを1年足らずで安全に作ったと主張する人々を信用していなかった。彼らの意見には根拠がなかったからである。(それが出来るなら普段10年掛かっていない。)当時は誰もがワクチンを打った。筆者は打たなかった。そして世論は2年かけて徐々に筆者に近付きつつある。
人々はあまりに遅いのである。まともなことを考えているとき、多くの人がそれに反対する。そして後で彼らは徐々に意見を修正することになる。筆者がそれに構うことはない。
そして金融市場においては間違った多数派であることが致命傷になる。誰もがそれを気に入り、誰もがそれを買っているということは、後から自分より高値で買ってくれる人が少なくなってきているということだからである。
それは相場において天井のサインであるどころか、定義である。後からより高値で買ってくれる人がいなくなった時が天井だからである。以下の記事で説明している。
最近は日本の素人の人々から金利が高いからドルを買いたいという声をよく聞くようになった。幸運を祈りたい。