ガンドラック氏: インフレが下がる限り景気後退は絶対に起きる

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の自社企画インタビューである。今回はインフレが減速すれば失業や景気後退が起きるのかについて語っている部分を取り上げたい。

アメリカのインフレ率低下

ガンドラック氏は金利の低下を予想している。アメリカ経済は長らく高金利に耐えてきたが、限界が近づいてきているからである。

高金利のお陰でインフレは下がってきている。アメリカのインフレ率は次のように推移している。

だがインフレ率が下がっているのは、高金利でアメリカ経済が弱まっているからである。

景気後退は不可避か

ここで問題になるのは、インフレ率の下落と景気後退はセットなのか、それともインフレ率が下がって経済成長率は下がらないという、いわゆるソフトランディングが可能なのかということである。

Fed(連邦準備制度)が特に重視しているのは、労働市場が弱まり賃金インフレが収まることである。賃金インフレは高金利の影響を受けにくく、インフレの中で一番最後まで根強く残っていた(が最近弱まってきた)からである。

彼らは特に失業率に注目しているが、ガンドラック氏はこう述べている。

Fedは労働市場は弱まることを目指していると言っている。彼らは例えば失業率の1%未満の上昇を目指している。

失業率は一度上がり始めて勢いがつくとそこでは止まらないと思うが、Fedが失業率の上昇を目指すと言うとき、それが実際にどのようにして達成されるのかを考えなければならない。

失業率が上がり、賃金上昇が減速することを彼らは望んでいる。だが人々が考えていないのは、単に失業率が上がって賃金上昇が収まるということだけが起こるのではないということである。

失業率が上がるということは、企業が従業員を解雇するということである。賃金が下がるということは、企業が高い給料を払えないということである。

それが起きるためにはどういう背景が必要か? 高金利で企業の経営が立ち行かなくなることである。ガンドラック氏は次のように続けている。

一部の金融機関やハイテク企業がレイオフを行なっているが、本当に起きなければならないのはギリギリの経営を行なっているような中間層の企業が高金利の悪影響を感じ始め、最終的には倒産するということだ。

結論

インフレ率が下がることを誰もが望んでいるが、それが実際にどのようにして実現するのかを考えている人はあまりに少ない。ガンドラック氏はこう続けている。

それがFedが金利を「より長くより高く」維持することで起きることだ。しかもそれは高金利政策の結果ではない。それは目標だ。

既にそのほとんどが行われた高金利政策を行ないながら経済にダメージがないと思っている人は、単にものをよく考えられないだけだ。だがそれは愚かにも金融市場のいたるところに織り込まれている。

そこで問題になってくるのが、例えば株式市場が来年も企業利益が上昇することを前提に動いていることである。だが以下の記事で説明しているように、景気後退が来るならば企業利益は上がるどころかむしろ下がる。

金融市場は来年の半ばに向けてこの希望的観測を修正してゆくことになる。

だがインフレ政策で発生した物価高騰を抑制すれば失業と倒産が起こるということは、20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が著書『貨幣論集』において何十年も前に言っていたことである。

今更何を言っているのか。それを知っていてインフレ政策でインフレを目指してきたのではないのか。ジム・ロジャーズ氏は次のように言っていた。

歴史から学べることは、人は歴史から学ばないということだ。


貨幣論集