引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の自社企画のインタビューである。今回は米国債の利払い増加と莫大な政府債務の問題について語っている部分を取り上げたい。
米国債の利払い増加問題
現在金融市場で大きな問題となっているのが米国債の利払い増加の問題である。
アメリカは現在GDPの119%分の政府債務を抱えている。これは低金利の時代には大して問題にならなかった。金利がゼロならば、どれだけ負債があっても利払いはゼロだからである。そして期限が来ればゼロ金利で借り換えれば良い。
だがコロナ後の現金給付によってインフレが起こった。そして金利を上げなければならなくなった。
ここで莫大な政府債務が突然大きな問題となる。アメリカの政策金利は現在5.25%まで上がったが、それはGDPの119%の負債に突如金利が付き始め、米国政府はそれを支払わなければならないことを意味するからである。
金融市場はこの問題に気づいたらしく、米国債が大いに売られている。ここ半年ほどの金利上昇はそれが原因である。
だがFed(連邦準備制度)は金利を「長く高く」保つとの姿勢を崩していない。これに対してガンドラック氏は次のように述べている。
金利を長く高く保つことは深刻な問題になる。
金利を長く高く保てばどうなるか。金利を上げたからといって、発行済みのすべての米国債の金利が急に上がるわけではない。だが国債に期限が来て米国政府が借り換えを行なうとき、それは現在の高金利で借り換えを行なうことになる。
Fedの利上げは一時停止している。だがそれでも問題は続いている。利上げを行わず高金利を維持するだけでも、次々に行われる借り換えによって米国政府の利払い費用は増えてゆくからである。
それは今後どれだけ増えるのか? ガンドラック氏は、このまま高金利が続けばどうなるか、次のように見積もっている。
これから5年で全税収の50%が利払い費用に行くことになる。
政府債務は将来の問題か
しかもより大きな問題は、どうやらこの政府債務の問題がインフレによって将来の問題から早急の問題へと格上げされたということだ。
ガンドラック氏は次のように言っている。
これはわれわれの孫の世代の問題ではない。
わたしが金融業界に入った頃、われわれが支払われる宛てのない約束をするような馬鹿げたことをやっているということは誰もが知っていた。だがそれは常に2050年辺りの問題だと思われていた。
だが10年後、1995年頃には、それが突然2040年の問題になった。
時間は前に進んでいる上に問題の方もこちらに近づいてきている。この問題は両面から互いに近付きつつある。
そして現在の推計では、税収の半分が利払いで消える未来はいつのことだったか? ガンドラック氏は次のように纏めている。
今やあと5年程度の問題のように見える。
ガンドラック氏によれば、これはもはやガンドラック氏だけの意見ではないらしい。彼は政府機関の公式の推計に言及して次のように言っている。
社会保障局の理事たちさえ、景気後退がないという前提でおよそ7年後にアメリカは資金不足に陥ると認識している。
だが実際にはわたしたちは今後7年の間に景気後退のあることを知っている。
インフレで金利を上げたアメリカは、いよいよ莫大な負債を支払う段階に近づいているようである。日本はまだ金利をそれほど上げていない。だがレイ・ダリオ氏によれば、どちらにしても問題は生じるようだ。
若者世代へのツケの後回しと言っていたものが、ここに来て今の世代の問題となりそうである。この負債の山に何の責任もない若者だけが重荷を負わされるよりはむしろ良かったのではないかと筆者は考えているのだが、どうだろうか。