サマーズ氏: 米国経済の2024年前半の景気後退の確率は25%

引き続き、アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏のBloombergによるインタビューである。今回はアメリカの景気後退について語っている部分を取り上げる。

来年前半の景気後退

サマーズ氏は前回の記事で、インフレ再燃の危険性に警鐘を鳴らす一方で、下落しているアメリカのインフレ率を好感していた。

だが、インフレ率よりも問題なのは景気の方である。インフレ率は下がったが、それは利上げによって経済が弱まったということである。

サマーズ氏はアメリカ経済の来年前半の景気後退の可能性を聞かれ、次のように答えている。

間違いなく五分五分以下だ。20%か25%ぐらいだろう。

雇用統計によれば賃金は伸び続けている。だから来年前半の景気後退は優位なシナリオではないだろう。

意外に低いと考えた読者も少なくないのではないか。ちなみに賃金は減速しており、「伸び続けている」と表現するのはやや苦しいのだが。

景気後退と株価の下落

アメリカ経済の景気後退については様々な人が予想を出しているが、例えば債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は来年第2四半期の景気後退をメインシナリオとしている。

通常、株価は景気後退の半年ほど前に下落するため、景気後退のタイミング予想は株式投資家にとって重要である。

ちなみに筆者はマネーサプライの減少速度から来年の第3四半期をメインシナリオとしている。以下の記事で説明している。

筆者より更に遅い予想をしているのがジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用していたスタンレー・ドラッケンミラー氏である。以下の記事で報じているが、彼は2025年をメインシナリオとして考えているようだ。

そしてサマーズ氏は来年前半はメインシナリオではないと考えているようだから、来年後半以降なのだろう。筆者かドラッケンミラー氏に近いだろうか。

結論

景気後退のタイミングは非常に重要である。それによって株価の動向は決まる。米国株は現在次のように推移している。

株価下落が景気後退の半年ほど前だと考えれば、ガンドラック氏の予想に基づくと株価はそろそろピークだということになる。

筆者やサマーズ氏の予想では、株価はピークに近いがもしかすればもう一度だけ高値を更新する時間的猶予が存在する。

そしてドラッケンミラー氏の予想に基づけば、株価のピークまでにはある程度の余裕があることになる。

さてどうなるだろうか。景気後退が来ること自体にはあまり異論はないが、タイミングには微妙な差がある。

来年後半以降を予想するサマーズ氏だが、こうも言っている。

通常、景気後退が来たとしても数ヶ月経ってからしか分からないから、リスクとして認識しておくべきだ。