DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューでアメリカの金利について語っている。
金利上昇の原因
ここの読者はよく知っているように、米国債は大量発行による買い手不足で暴落し、金利は高騰していたが、雇用統計とFOMC会合のあと少し持ち直し、金利は多少低下した。
ガンドラック氏は次のように述べている。
金融市場はパウエル議長の慎重な姿勢を好感したのだろう。株も債券も上がった。金利はおよそ0.25%低下した。
だがFed(連邦準備制度)はもう何ヶ月も利上げを停止しているのに、そもそも何故金利は上がっていたのか。ガンドラック氏によればFedが高金利を長く維持すると宣言したことが原因だという。
彼は次のように言っている。
金利をより高く上げ、それをより長く維持するという考えには大きな弱点があり、それが債券市場にここ6週間から8週間ほど影響を与えたのだろう。
Fedはインフレを打倒するためにそう宣言したのだが、その大きな弱点とは何か。
雪だるま式に膨張するアメリカ政府の利払い
ガンドラック氏はこう続けている。
政府債務の利払い費用が数千億ドルも増加しており、政策金利が5.38%に維持される限りその増加は続く。
Fedが少しでも金利を上げるかどうかはドットプロット公表時点に比べて今や不明瞭になったが、もし上げれば、利払いは莫大になる。
金利が上がったということは、債務者にとっては利払いが増えるということである。そして多くの先進国において、最大の債務者は政府である。
だからインフレが起こって金利が上がり始めると、政府は莫大な債務に対する利払い増加という悪夢に迫られる。
それはどれだけの金額になるのか。ガンドラック氏は次のように説明している。
実際、発行されている国債の50%が今後3年で満期になる。だから金利がこの水準に維持されれば、利払いは2兆ドルに達する。それは現在の財政赤字の額と同じだ。
金利が上がったとしても発行済みの国債に関しては金利が変わることはない。だが発行済みの国債は順番に満期になる。そして満期になれば、政府は高騰した今の金利で借金を借り換えることになる。
だから仮にFedがこれ以上利上げをしなくても、高金利を維持しているだけで政府の利払いはどんどん膨らんでゆく。
アメリカの債務危機に気づき始めた債券市場
ガンドラック氏は、最近の金利上昇は債券市場がこの問題に気づき始めたためだと言いたいのである。事実、多くの著名投資家がこの問題について次々に語っていた。
ガンドラック氏はこう続けている。
利払いの問題が急激に押し寄せてくるということに人々が気づき始めている。財政赤字が最近のようにGDPの6%から8%のレンジであり続ければ、5年後には利払い費用は税収の半分に達するだろう。
アメリカ政府が財政赤字をこのまま垂れ流し続ければ、国債の量は今以上に増えてゆく。だが、今でさえ米国債は買い手不足だというのに、これ以上発行して誰が買うのだろうか。金利は上がるしかない。だが金利が上がると利払いの問題が更に大きくなるので金利は上げられない。
この矛盾はもうどうしようもないのである。世界トップの経済大国アメリカの債務危機が近づいている。金利は上がるのか下がるのか。恐らくはスタンレー・ドラッケンミラー氏の複雑な金利予想が正しいのかもしれない。
ガンドラック氏は次のように纏めている。
市場が直面しなければならない事実は、現在の金利と財政赤字の水準をこれ以上維持することは不可能だということだ。
そしてこの問題は日本にとっても他人事ではない。金利が上がり始めているのだから、アメリカより大きい負債を抱えた日本経済の方が金利上昇に耐えられないのである。
何の根拠もなく政府債務は問題ないと言ったのは誰だったか。世の中に流布されている経済の常識は本当に真実の真逆のものばかりである。