アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、最近発表された雇用統計と11月のFOMC会合結果にコメントしている。
弱い労働市場とインフレ
最近発表された最新10月の雇用統計では、弱まる労働市場を通してアメリカ経済の減速が鮮明となっていた。
この経済統計についてサマーズ氏は以下のようにコメントしている。
自動車産業でのストライキもあった。月ごとの数字は変化が激しい。
労働市場は数ヶ月前のように真っ赤に過熱しているわけではないが、2%の持続可能なインフレ目標に向かっているかどうかは、まだかなり疑わしい。
1月の数字にあまり大きな意味を見出すべきではないという点についてはサマーズ氏に同意する。だが、以下の記事で説明した通り労働市場が持続的に弱まっている理由はマネーサプライの減少であり、それが続く限りアメリカ経済の減速は止まらないトレンドだろう。
一方でインフレについてはサマーズ氏に同意すべきかもしれない。パレスチナ情勢が原油高に繋がる可能性もある。
だがもはや問題は、普通の景気後退なのか、インフレもセットになったスタグフレーションなのかということだろう。
金融市場の反応
この状況に対して金融市場はどのように反応したか。まず金利は低下方向で反応している。以下はアメリカの長期金利のチャートである。
しかしより大きく反応したのは株式市場だろう。米国株は次のように推移している。
米国株は金利上昇で数ヶ月下落していたので、金利が下がった時の反発も急速である。
利下げを見込む金融市場
このように動いた理由は、FOMC会合でパウエル議長が次回会合での利上げを強くは主張しなかったからだろう。
特に株式市場は、それで高金利の重荷が消え去ったかのように反応している。
こうした金融市場の反応に対して、サマーズ氏はそれが早計過ぎるとして次のようにたしなめている。
彼らの解釈はパウエル議長の実際の発言に比べて少し浮つきすぎだろう。
今週とより長期的な金利の動きや株式市場に見られるような非常に劇的な反応があったが、わたしは多くの人ほどインフレ抑制の仕事、インフレとの戦いがもう終わったということを確信できない。
必要な金融引き締めが終わったと考えるのは急ぎすぎだ。
だが個人的には、株価の上昇はアメリカの景気後退の時期を考慮すれば自然な反応だろうと考えている。
景気後退の時期は筆者のメインシナリオで来年の第3四半期である。株価は景気後退の半年ほど前に下がるので、筆者の見通しが正しければ株価にはもう少しだけ景気後退のことを忘れて飛んだり跳ねたりする猶予が与えられている。
スタンレー・ドラッケンミラー氏などは景気後退のタイミングを筆者よりも遅く予想しているので、彼にとってこの反発はまったく驚きではないだろう。
株式市場はもう少しの間飛んだり跳ねたりするのだろうか?
個人的な意見を言えば、どちらでも良い。最終的に行き着くところは同じであり、筆者にとっては更に良い値段で空売りを仕込む機会があるのかないのかの違いに過ぎないからである。