米国の10月雇用統計、来年の景気後退に向け経済急降下

さて、インフレの見通しを示し、来年のアメリカの景気後退へのカウントダウンとなるべき最新10月分の米国雇用統計が発表された。結論から言えば、筆者が予想する来年の景気後退に向けてまっしぐらの数字だったと言える。

遂に上昇始めた失業率

まず失業率だが、10月の失業率は3.9%となり、前月の3.8%から上昇した。グラフを見れば失業率がついに離陸しつつあることが分かる。

最近のこの上昇トレンドが長期的なものであることは、アメリカ経済の状態を見れば分かる。アメリカは物価高騰を利上げで抑え込んだが、インフレ率が下落した一方で実体経済へのダメージはまだ軽微である。

しかし20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が指摘したように、インフレを利上げで抑え込んだ後の失業増加は避けられない。

だからその大量失業がそろそろ来始めているのである。そしてそれは平均時給の数字にも表れている。

失速する平均時給

10月の平均時給の上昇率は前月比年率(以下同じ)で2.5%となり、前月の4.0%から失速した。

遂に失業率は上がり、平均時給は失速してゆく。多くの著名投資家が来年の景気後退を予想している。

同じく失速する労働市場

さて、この平均時給に週当たりの平均労働時間と全労働者数を掛けることで、労働者全員に支払われた金額の総額をおおむね知ることができる。

時給はいわば単価なので、人件費が主なコストとなるサービス業の物価などの先行きを知るには有用だが、アメリカ経済全体を見るには労働市場で支払われた総額を考えるべきだろう。

そしてその賃金総額の10月の上昇率は0.1%となり、前月の6.4%から大きく減速した。

ほとんどゼロ成長である。つまり、アメリカの労働市場は拡大をほとんど止めている。

結論

今回のアメリカ雇用統計は筆者が色々解説するまでもなく悪く、来年の景気後退に向けての着実な一歩となっている。

何故アメリカ経済は減速しているのか? 原因は金利上昇だが、金利上昇がアメリカ経済から資金を徐々に吸い上げている様子を見たい人は以下の記事を参考にすると良いだろう。

この状況で米国の株式市場は来年の企業利益増加を前提に推移している。それは無理筋だろう。その幻想が壊れるときが米国株の終わりである。