ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏がRobin Hood主催の会議で米国株の長期見通しについて語っている。
緩和とインフレと高金利
アメリカ経済はまず物価高騰に襲われ、その次にインフレ対策で利上げをしなければならなかったために高金利に襲われている。
それでもアメリカ経済はまだ景気後退に陥っていない。それは以下の記事で書いたように、コロナ後に行われた莫大な現金給付の資金が実体経済のなかに残っていたからである。
ドラッケンミラー氏はまずこのことに言及している。
アメリカ経済にはコロナ後の緩和マネーが遺産として残っていたが、その資金も急激になくなりつつある。量的引き締めも急速に行われている。
量的引き締めとは、中央銀行が国債を買い入れる量的緩和の逆回しのことで、アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は国債の保有額を減らしている。
借金だらけのアメリカ政府が発行する大量の国債をこれまで買い支えていたのはFedだったが、Fedが買い支えなくなったことで国債の買い手がいなくなり、国債の価格が暴落し金利が高騰している。
景気後退はいつ来るか
それでもコロナ後の緩和マネーが株価と経済を支えてきた。だがそれも尽きつつある。
そしてアメリカ経済は沈んでゆく。最新の雇用統計がまさにその未来を語っている。
筆者と著名投資家たちにとって、それは単に時間の問題である。だがタイミングについては誰もがまったく同じ予想をしているわけではない。例えばジェフリー・ガンドラック氏は景気後退は来年の第2四半期がメインシナリオだと考えている。
筆者はマネーサプライの減り方から、もしかしたら第3四半期かもしれないと予想した。
ドラッケンミラー氏の予想はどうか。彼は次のように述べている。
株式市場や経済はこれらの事実を無視しているように見えるが、今後を考えると、特に2025年、もしかしたら2024年に何かが崩壊する可能性に対してオープンになるべきだろう。
これは興味深い予想である。ドラッケンミラー氏は2025年の景気後退がメインシナリオだと考えているようだ。これはガンドラック氏や筆者のものよりも遅い。
結論
株価の下落は景気後退の半年ほど前というのが普通なので、景気後退のタイミング予想は株価の天井のタイミング予想とも繋がる。
ドラッケンミラー氏の言うように2025年がメインシナリオなら、それまでにまだ1年以上の時間があることになる。
それが理由か、株価についてはドラッケンミラー氏は次のように言っている。
ここ2、3ヶ月は下落相場だった。すべての売りポジションは奏功し、すべての買いポジションは芳しくなかった。そのような現状の市場のセンチメントを考えると、短期的には空売りには積極的になれない。
米国株は次のように推移している。
米国株にはもう一度高値を目指す時間があるだろうか。最終的な運命は決まっているのだが。