ドルの暴落シナリオを2018年の世界同時株安を参考に予想する

さて、株式市場は下落し始めたが、ドルはまだ高いままである。だがドルもいずれ下落することになる。

コロナ後のインフレとドル

コロナ後の莫大な現金給付によって世界的な物価高騰が起こった。2022年のウクライナ情勢が2021年から始まった現在のインフレの原因ではあり得ないことは、ここでは繰り返し述べていることである。

事実、ここでインフレについて最初に言及したのは2020年なのである。

インフレという意味では、ドルの価値は大きく減少した。アメリカでは最大9%のインフレとなった。インフレとは紙幣の価値が下がることなので、それだけドル紙幣の価値は下がったのである。

だが興味深いことに為替市場ではドルはむしろ上がった。金利が上がり、高い金利に惹かれてドルに資金が集まったからである。

短中期的には為替相場は金利で動く。しかし為替相場も、インフレはドル紙幣の価値下落だという事実に永遠に反して動き続けることはできない。

だからドルはいずれ下落することになる。インフレでドル高というのは無理筋であり、その反動がいつか来ることになる。

2024年景気後退とドル相場

それがいつ来るかと言えば、金利が下がる時である。

物価が高騰し、それを抑制するためにFed(連邦準備制度)は利上げを行なった。為替相場は金利に反応してドル高で動いた。金利が上がっている間は、インフレはドル紙幣の減価だという事実を為替相場は無視している。インフレは実は物価上昇という意味だということに気付かずインフレ政策を支持していた日本人と同じである。

だが利上げが実体経済に効き始めれば、アメリカ経済が弱まり、利上げが出来なくなる時が必ず来る。そしてFedは利上げから利下げに転換する。その時には、利下げによるドル下落と、これまで無視していたインフレによるドル下落の両方が来ることになる。ドルは大幅に下落するだろう。

では利下げ転換はいつ来るのか。多くの専門家が来年のアメリカの景気後退を予想している。

では景気後退が来て、Fedがそろそろ利下げが必要だと判断し、金利は下がるのか。筆者の考えではそうはならない。何故ならば、Fedが景気後退を見極めるより先に株式市場が下がることになるからである。

株式市場と景気後退

Fedのパウエル議長は2021年に既に高騰していたアメリカのインフレ率を無視し続けた。

結果として利上げはかなり遅れることになった。

彼は基本的に手遅れになってからでなければ動かない。そのパウエル議長と株式市場と、どちらが景気後退を先に嗅ぎつけるかと言えば、間違いなく株式市場だろう。

だから株式市場が先に下落し、それに反応して債券市場では金利が下がり始め、パウエル氏もそれに従って利下げに向かうことになる。金利が下がり始めれば、ドルも下落することになるだろう。

ここで重要なのは、このシナリオでは株式市場の下落がドルの下落よりも先になるということである。

2018年のドル下落

パウエル議長が利上げをやり過ぎて株式市場が下落し、その後にドルも下落する。何処かで聞いた話ではないか。2018年の世界同時株安である。

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏などは現在の利上げはやり過ぎだと主張しているが、パウエル議長が利上げをやり過ぎたのは今が初めてではない。

それは2018年にも起きた。パウエル氏は利上げと量的引き締めを強行し、しかも株式市場には影響を与えないと無根拠に主張した。2021年にインフレは脅威ではないと無根拠に主張したのと同じである。

そして株式市場は下落し、債券市場では金利も下落し、最終的にはドルも下落した。

まずは米国株のチャートから掲載しよう。最初に下落したのは株価であり、利上げに耐えられなくなった株式市場は10月に下落を開始している。

一方で、アメリカの長期金利は11月前半まで高止まりしていたことを指摘したい。

そしてドル円は12月に下落した。

結論

何故こうなったか。まず金利上昇が株価下落の原因なのだから、金利は高止まりして株価を下げ続ける時期が一定期間あるということになる。そこですぐ金利は下がらない。

だが、株価があまりに下落すると市場はようやく「実体経済もまずいのではないか」と思い始める。金利がここまで上がっている時点でそれは最初から分かっているのだが、市場はようやくそれに気付き始め、景気後退を予想して金利が下がる。ドルが下がるのはそれからなのである。

2023年から2024年にかけてはどうなるか。パレスチナ情勢など不確定性はあるが、このまま金利高からの株価下落というシナリオで行くのであれば、ドル円に関しても2018年と同じシナリオで下落する可能性が高い。

つまり、ドルの下落は株価の下落の後ということになる。

実際、2018年には筆者は株式の空売りで儲けた後、まだ落ちていなかったドル円を空売りして2回利益を上げている。

今回も同じような状況になる可能性がある。米国株の見通しについては以下の記事で解説しているので、そちらを参考にしてもらいたい。まずは株価の下落からである。