引き続き、Fox BusinessによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。今回はドルについて語っている部分を紹介する。
まだ強いドル
ドルの先行きには様々な議論があるが、今のところドルは高値水準で推移していると言って良いだろう。ガンドラック氏は次のように述べている。
ドル指数は、対ユーロの影響は強いが、115から100まで下がったものの、再び上昇している。ドルはまだ弱くない。
ユーロドルのチャートを掲載してみよう。下方向がドル高ユーロ安である。
2022年にはFed(連邦準備制度)の利上げによってドル高になった。だが2022年秋頃にアメリカのインフレ減速が明らかになると、ドルは下落(ユーロドル上昇)に転じたが、最近ではまたドル高になりつつある。
ドル高の原因
ドル高の理由は何だろうか。ガンドラック氏はこう語っている。
大部分はFedが理由だ。Fedは世界でもっともタカ派の中央銀行となっている。
ドル高の原因の1つは、FedがECB(欧州中央銀行)や日銀よりもタカ派であることである。日銀は徐々に実質利上げを行なっているが、それでもFedの利上げ幅には及ばない。
ECBも同様である。
だが、最近のドル安に関してはそれだけが原因ではない。何故ならば、Fedは現在利上げを停止しているにもかかわらず、アメリカの長期金利は上がっているからである。
政策金利は上がっていないのに長期金利だけが上がっている。それが最近のドル高の原因となっている。
その理由は米国債の量が多過ぎるからである。Fedが国債の買い入れを止めているにもかかわらず、アメリカ政府は大量の国債を発行しているので、買い手がおらず米国債が暴落している。
債券にとって価格下落は金利上昇を意味するので、それで10年物国債の金利である長期金利が上がっているのである。ポール・チューダー・ジョーンズ氏などは長期金利はまだまだ上がると言っている。
ドル相場の今後の見通し
ではドルはこのまま上がってゆくのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
だが景気後退が来ればドルは下落することになる。最安値を更新することになるだろう。
国債の買い手不足という問題はあるが、それでも景気後退になれば投資家は株式などのリスク資産を捨てて国債を買おうとするだろう。そうすれば金利が下がり、ドルは下落することになる。
ドルはこれまでかなりの無茶を通してきた。コロナ後の現金給付によってアメリカは10%近いインフレになった。インフレとはドル紙幣の価値が下がり、ドルでものが買えなくなる状況のことである。
にもかかわらず、為替相場ではドルはむしろ上がった。それはドルが基軸通貨だからである。ドルをどれだけばら撒いても、そのドルを欲しがる人が世界中にいる。イギリスが同じようなばら撒きをしようとしたが、ポンドと英国債が急落して撤回を余儀なくされた。
ドルはいくら印刷されてばら撒かれても価値が落ちないのか? この問題はファンドマネージャーのレイ・ダリオ氏と経済学者のラリー・サマーズ氏が討論していた問題である。
結論を言えば、紙幣印刷によるドルの下落は起きなかったのではなく、延期されただけである。景気後退と同じである。
だからタイミングが問題となる。ガンドラック氏もドルの下落を待っている。彼は景気後退を来年前半と予想しているから、ドル下落もそれくらいかその前ということだろう。
ドルの下落については2018年の世界同時株安の事例が恐らく参考になる。またそれについても記事を書くべきだろう。