DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が最近の金融市場の動向がアメリカ経済の景気後退の到来を示唆しているとTwitterで指摘している。
長短金利の逆転
ガンドラック氏は次のように言っている。
長短金利の逆転が急激に解消されつつある。
長短金利の逆転とは、アメリカで2年物国債の金利が10年物国債の金利よりも高くなっていることを指す。
通常、債券は期間が長いほど金利が高くなる。だから長期金利から短期金利を引いた長短金利差はプラスになっているのが普通である。
だが強すぎる利上げにより将来的に景気後退が来ると債券市場が織り込むと、政策金利に左右されやすい短期金利は高いままだが、将来の景気に左右されやすい長期の金利がそれよりも低くなる。そして長短金利差がマイナスになる。
長短金利の逆転は、歴史上ほとんど例外なく景気後退の前触れとなってきた。そして今どうなっているかと言えば、アメリカで長短金利は逆転している。ガンドラック氏は次のように述べている。
長短金利差は数ヶ月前まで-1.08%だった。今は-0.35%だ。
長短金利逆転の解消
ガンドラック氏が今指摘しているのは、長らくマイナスとなっていた長短金利差が上昇に転じていることである。長短金利差のチャートは次のようになっている。
長短金利差がマイナスになれば、その後ほぼ例外なく景気後退が起きる。だが実際には、過去の例では景気後退が起きるのは長短金利差がマイナスになり、そしてプラスに戻った後である。
例えば2008年のリーマンショックにおいては長短金利差のチャートは次のようになっている。灰色の期間が景気後退である。
以下は2001年のインターネットバブル崩壊時の長短金利差である。
両方とも長短金利差がマイナスである間は景気後退にならず、それが解消された後に景気後退になっている。
結論
ということで、長らくマイナスになっていた長短金利差がプラスに近付きつつあることは、景気後退が本当に近づいたサインなのである。ガンドラック氏は次のように述べている。
これは景気後退に気をつけ始めるシグナルどころか、景気後退に向けての直接的な警告だ。
もうすぐ雇用統計も発表される。遂に上昇トレンドに乗りつつある失業率について、ガンドラック氏は次のように述べている。
失業率があと0.2%か0.3%ほどでも上がれば、それも景気後退の警告だ。
シートベルトを締めておくことだ。
失業率のチャートは次のようになっている。
だが、長短金利差については筆者は最近、1970年代の物価高騰時代において長短金利差がマイナスのまま景気後退に突入していることが気にかかっている。
それは当時、景気後退に突入してもなおインフレ退治のために政策金利を高く保たなければならなかった(だから連動する短期金利が長期金利に比べて高いままとなった)ことを意味している。
そうなれば、最近下落している株式市場にとっては更に悪いニュースである。
株式市場の方の予想はそれほど難しくない。だが債券市場の方はガンドラック氏が言うよりも複雑なことになるかもしれない。
インフレ政策が引き起こした40年来のインフレ相場であり、中央銀行も破綻しかねない状況なのだから、より多くの可能性に備えておくべきだろう。