DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社のウェブキャストで米国株の株価水準と来年想定されているアメリカの景気後退について語っている。
歴史的水準で割高な米国株
ガンドラック氏だけでなく、筆者も最近の株価下落前から言い続けているが、米国株は史上稀に見る水準で割高である。
そう考えられる理由をガンドラック氏は次のように説明している。
株式を好むのは難しい。リスクプレミアムが過去17年で最低になっているからだ。リスクプレミアムは2021年には3.5%だったが、今では0.6%だ。
リスクプレミアムとは、ある資産が無リスク資産と比較してどれだけの利益を保有者にもたらすかを計算したものである。無リスク資産には大抵国債が使われ、国債の金利が4%の時に金利が6%の債券があれば、リスクプレミアムは差し引きで2%となる。
株式の場合、株価に対してどれだけの1株当たり利益が生み出されるかが注目される。リスクプレミアムが0.6%ということは、理論的に無リスクとされる米国債ではなく価格下落のリスクのある米国株を選んだ結果、国債よりも0.6%多いリターンが得られるということである。
この歴史的に低いリスクプレミアムは、利上げで国債の金利が大きく上がったにもかかわらず、株価がむしろ高値圏で推移していることが原因となっている。米国株のチャートは次のようになっている。
この状況で誰が株を買うのかということを筆者は繰り返し言っている。だが2018年と同様に、実際に株価が落ちなければ誰も気にしないだろう。
株価推移の要因
米国株は現状、何故高いままなのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
米国株の値動きは主に株価収益率が原因で、1株当たり利益は今年ほとんど何も寄与していない。
株価は以下の計算式で計算される。
- 株価 = 1株当たり利益 x 株価収益率
株価が高くなるには、1株当たり利益と株価収益率の少なくともどちらかが高くならなければならない。だが利益の方はむしろ下がっているので、株価収益率が高いということである。
たった0.6%のプレミアムを得るために株価下落のリスクを取るほどに血眼になって株を買っている株式投資家の購買意欲は、株価収益率に表れている。
株価収益率が高止まりしている理由は、株式投資家が企業利益がここから回復するという希望を抱いているからである。
だがガンドラック氏は次のように言う。
1株当たり利益が来年11%増加するという予想があるが、わたしの予想はそれより下だ。来年前半には景気後退になると予想しているので、経済はそれほど強くはならない。
結論
明らかに高い株価収益率(あるいは低すぎるリスクプレミアム)は来年の企業利益増加を織り込んでいる。
だが、前にも述べたように企業利益とはGDPの要素のうち投資と純輸出に影響される。だが投資がこれから伸びない理由については、以下の記事で既に説明しておいた。
そして純輸出について言えば、アメリカの顧客である中国の経済は死にかけている。
米国株はどうなるだろうか。楽しみに結果を待ちたい。