DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、最近の原油価格の上昇とインフレの見通しについて語っている。
インフレ率と原油価格
2021年から2022年の物価高騰のあと、アメリカのインフレ率は下落してきている。インフレ率のチャートは次のようになっている。
だが最近のインフレ率下落の多くは原油価格の下落によるものである。そして問題は、最近原油価格が再上昇しているということである。
原油価格の上昇
原油価格のチャートは次のようになっている。
最近の原油価格の上昇についてガンドラック氏は次のように述べている。
6月以来30%も値上がりした原油価格は明らかにインフレに寄与する。
ガンドラック氏は、Fed(連邦準備制度)がこのまま高金利を保つ限り、アメリカ経済はデフレになり成長率も沈んでゆくと予想している。筆者も基本的にはその考えを支持している。だが、サービスのインフレも住宅のインフレも収まるなかで、唯一インフレ側に作用している要素が原油価格である。
ガンドラック氏はFedの利上げはもう終わったという予想をしているが、それでも原油価格に関連して次のように述べている。
利上げ継続の確率は原油価格の上昇が無かった頃よりも上がったと思う。原油価格の上昇は問題になるだろう。
これらのことはFedが利下げ、あるいは利上げ停止できるという考えにとって多少逆風になる。
エネルギー価格の推移
インフレは複雑な状況だ。だが投資家にとっては状況はそれほど難しくない。利下げ観測とエネルギー価格上昇が相反する状況なのであれば、両方に賭ければ良いのである。
株式市場や債券市場で利下げと来年の景気後退に賭けた上で、エネルギー関連銘柄を買い持ちにする。ガンドラック氏は次のように述べている。
コモディティのポジションを作るのに良いタイミングかもしれない。200日移動平均線を超えてきた。力強い動きだ。
基本的にはエネルギー関連だ。エネルギー関連だが、コモディティ銘柄のこうした動きには勢いがあるように見える。
相反する要素があって予想が難しい場合にも、投資家にとってはそれほど難しくない。ヘッジファンドの草分けであるジョージ・ソロス氏が著書『ソロスの錬金術』で次のように言っていたことを思い出したい。
1つの仮説にすべてを賭けるというのは、私にはめずらしい行為である。普通は、少なくとも部分的に矛盾する仮説に従って行動している。
原則として、妥当性を持つ仮説に基いてつくったポジションは手放さないことにしている。そして新しい仮説に基いて反対方向のポジションを追加する。その結果、調整する必要のある微妙なバランスを適宜調整できるようになる。
ちなみに筆者が前から推奨しているウランの価格は、現在鯉の滝上り状態である。
ウランについては以下の記事を参考にしてもらいたい。
だがガンドラック氏の推奨はやや遅いのではないかと筆者には感じられる。来年に景気後退になるならば、結局はエネルギー価格も天井を作って下落することになるからである。
原油価格には語るべき事情が他にもある。また時間のあるときに記事にしたいと思っている。
ソロスの錬金術