ポジャール氏、機関投資家向けのアナリストレポート販売ビジネスについて語る

元クレディ・スイスの短期金利戦略グローバル責任者でEx Uno Plures創業者のゾルタン・ポジャール氏が、Odd Lotsのインタビューで自身のリサーチ会社のアナリストレポートの販売ビジネスについて語っている。

機関投資家が資産運用を行う上での情報源については個人投資家の読者にはあまり知られていないだろうから、インタビューのその部分を紹介したい。

ポジャール氏の新ビジネス

クレディ・スイスの破綻後、クレディ・スイスを退社して自分のリサーチ会社を立ち上げたポジャール氏だが、クレディ・スイス時代には優れたアナリストレポートを連発し、金融業界の一部ではカルト的な人気を誇っていた。

ポジャール氏の最近一番正確だった予想は、アメリカの政策金利が5%まで上がることを予想したことである。

ポジャール氏は、自分の会社を立ち上げた後もアナリストレポート配信をメインのビジネスとするようだ。ポジャール氏は新会社のビジネスについて次のように語っている。

リサーチに関する出版物については、2つのシリーズを提供する。1つ目は「Money, Banks and Bases」で、これが一番世間から見たわたしのイメージに合うはずだ。このシリーズでは、世界50番位までの巨大なバランスシートについて分析してゆく。

巨大な銀行は何をしているのか? G6の諸国は何をしているのか? 彼らはポートフォリオの中で何をしているのか? 彼らのバランスシートにはどういう弱点があるのか?

グローバルな資金の流れを追うことを得意とするポジャール氏らしい内容である。

また、もう1つはポジャール氏が以前から提唱している、ドルが基軸通貨の地位から滑り落ちた後の世界、ブレトン・ウッズIII(ブレトン・ウッズ体制から数えて3番目の金融システムとなるため)についてのものである。

これに平行するもう1つのシリーズは、「Money and World Order」だ。これはブレトン・ウッズIIIがどのように展開するかを分析する。

脱ドル化、ゴールドの復活、中央銀行デジタル通貨の構築、新たな金融システム、原油と人民元、人民元建てのコモディティ貿易決済などの話題だ。

タイトルを訳せば「資金と世界秩序」となるが、世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏の英語の著書『The Changing World Order』(変わりゆく世界秩序)を彷彿させるタイトルである。

実際、ダリオ氏とポジャール氏の主張はかなり似ているところがある。

ポジャール氏は、この2つのシリーズで、これからドルが基軸通貨から滑り落ちる様子を追ってゆくようだ。

機関投資家向けのアナリストビジネス

残念ながら、ポジャール氏の2つのシリーズは誰でも読めるわけではない。何故ならば、これは機関投資家向けのサービスだからである。

ポジャール氏は次のように続けている。

これが購読者の読むことのできる2つのシリーズだ。価格は高い。機関投資家だけを対象としていて、個人投資家を対象とはしていないからだ。わたしは課金の壁に隠れることになるが、購読者はわたしと話すことも出来るし、リモートの講演や会議なども行われる。

個人投資家の読者はあまり知らないかもしれないが、これが機関投資家向けの情報サービスだ。プライベートバンキングなどのサービスも同じだが、金融業界では多くの人から広くお金を徴収するよりは、少数の極めて裕福な顧客から大きなフィーを得ることが好まれる。

では一般の読者はポジャール氏の相場観についてまったく知ることが出来ないのか? ポジャール氏の新会社Ex Uno Pluresのウェブサイトには「A Decade on Money」というシリーズがあり、ポジャール氏のこれまでのアナリストレポートを無料で読むことができる。アドレスは以下である。

興味のある人は覗いてみると良いだろう。

また、ポジャール氏が基軸通貨としてのドルについて語った最新の相場観は、以下の記事で読むことができる。そちらも参考にしてもらいたい。


Principles for Dealing with the Changing World Order