5月分のアメリカの雇用統計が発表された。労働市場が強いか弱いかは賃金のインフレにかかわり、賃金は特にサービス業などのコストとなって経済全体のインフレがどうなるかにかかわるので、雇用統計は現在非常に重要な指標となっているが、結論から言うと今回の結果はデフレ的だった。
低下した失業率
失業率は3.7%となり、前月の3.4%から上昇した。予想の3.5%も上回る結果であり、そこそこ上がった失業率だったと言える。
チャートで見ると去年から横ばいなのだが、金融引き締めでアメリカ経済が弱くなっていることも考えると、やはりこのチャートは失業率が底打ちしていることを意味すると取るべきだろう。長期的には失業率は上がってゆくことになる。
今後の失業の増加はインフレ政策の当然の結果である。まずインフレが起こり、失業率は短期的には低下するが、インフレ抑制のために金利を上昇させなければならなくなると、失業率は上がるのである。そして長期的には経済にマイナスとなるのだが、その辺りの話は以下の記事で説明している。
平均時給も減速
次に平均時給だが、平均時給は前月比年率で4.0%の上昇となり、前月の4.8%から減速した。
時給は特にサービス業にとっては直接的なコストとなるが、こちらも減速した。チャートで見ても、中期的な減速トレンドとなっている。
平均時給に関しても特にここからインフレ加速になる理由がなく、経済全体としては中央銀行が政策金利を5%に保つ限り減速していくほかないので、このまま減速トレンドが続くのだろう。
結論
ということで、アメリカ経済は順当に減速への道を進んでいる。市場では労働者数自体が増えたことに反応してドル高となっているが、インフレに関して一番重要なのは平均時給であり、アメリカが利上げから利下げに転じるのもそれほど遠くないと見るべきだろう。
ドル円は次のように推移している。
ドル円の見通しについては以下の記事に書いているので、参考にしてもらいたい。