銀行危機を引き起こした銀行という詐欺同然の仕組みを廃止すべき

シリコンバレー銀行が取り付け騒ぎの後に破綻したとき、そもそも銀行という仕組みについて筆者が考えていたことがあるのでそれについて書いてみたい。よく考えてみれば、銀行という仕組みそのものがおかしいか、あるいは少なくとも不要なのである。

シリコンバレー銀行の取り付け騒ぎ

シリコンバレー銀行は取り付け騒ぎの後に破綻した。主な顧客だったシリコンバレーのスタートアップがアメリカの金融引き締めで資金調達に苦労し、そもそも貯金をすり減らしていたことに加え、シリコンバレー銀行自身も投資していた米国債の価値の下落により損失を出していた。

詳細は以下の記事で説明している。

だが今回焦点を当てたいのは、預金者の大半が単に銀行に預けていると思っていた預金の大半が実際には別の場所に投資されており、しかも預金者の預かり知らぬところで損失を出しているということである。

銀行のビジネス

実際、預金者が銀行に預けた現金は9割方銀行には存在しない。銀行は預金者から預かった資金を貸し出して金利収入を得るビジネスなので、あなたの預けた預金の大半は別の個人や企業に貸し出されているか、国債などを購入するために使われており、銀行内には存在しない。

だが銀行が第3者に貸した金は返って来なかったり、購入した国債の価格は下落したりする。その時に預金者に金を返せと言われれば、銀行は金を全額持っていないので、破綻してしまうわけである。

大雑把に言えばこれがシリコンバレー銀行が破綻した理由である。特にコロナ以後のインフレを抑制するためにアメリカでは金融引き締めが行われ、債券価格が大幅に下落したので、損を出している銀行は多いはずだ。以前以下のように書いたことを思い出したい。

全部で31兆ドル存在する米国債の価格が利上げによって大きく下落しているのだから、数千億ドルや数兆ドル規模の損失はアメリカ経済に去年からずっと存在しているのであって、数百億ドルのキャッシュフローが尽きて死んだシリコンバレー銀行など氷山の一角に過ぎないし、今更そんなことはニュースでも何でもない。

本質的な問題点

ここで一番の問題が何かを考えてほしい。一部の素人からは債券価格下落をヘッジしておくべきだったという意見が出ているが、ヘッジのコストを考えればそれはそもそも不可能であり、ヘッジとは何かを理解していない上に本質からも外れた意見ということになる。

又貸ししていること自体も問題ではない。銀行とは元々そういうビジネスである。だがここで問題なのは、預金者が又貸しされていることを認識していないことである。

そもそも預金が預金と呼ばれているのだから、金融業について何も知らない預金者がそう考えるのは当然だろう。預金者はただ銀行に現金を預けただけである。それを勝手に別のところに又貸しして良いという同意を明示的に与えている預金者がどれだけ居るだろうか。

実際には預金者は債権者なのである。銀行が貸した金を失えば、そのお金が戻って来ないこともある。銀行にお金を「貸す」のではなく「預ける」という表現にしていることは、又貸しの事実を意図的に隠して人々が何も考えずにお金を「預け」に来るように仕向けており、あからさまに言えば詐欺的であり、控え目に言っても虚偽表示である。

だから銀行が自分の借金を「預金」と呼び続ける限り、人々が何も知らずに現金を預けに来て、それがいつの間にか消えているということが起き続ける。それが銀行危機の本質的問題である。銀行が「預かって」いるはずの現金は実際には9割方存在しないのだから。

本質的問題を解決するために

話をもう一度整理しよう。実質的に言えば、人々が銀行にあずけているお金は実際には国債などに投資されている。

これは実際には預金者が国債に投資をしていることに等しい。だが銀行の虚偽の表示により、預金者はそれを意識していない。

この状況により預金者は2つの不利益を被っている。1つは自分のお金がどうなっているかを十分に知らされていないこと、もう1つは入ってくるはずの国債の金利を銀行に中抜きされていることである。

アメリカでは政策金利は4.75%まで上がっているので、本来預金者は普通預金に対しても4%以上の金利をもらって良いのだが、アメリカの多くの銀行では預金者に十分な金利を支払っておらず、ゼロ金利に慣れてしまった預金者の多くはその中抜きに気づいていない。

この状況を解決する方法は簡単である。銀行という仕組みを廃止して、預金者が直接国債やMMF(マネー・マーケット・ファンド)に投資すれば良いのである。

この議論において、証券会社と銀行の違いは1つである。顧客が自分で投資をしているのか、顧客は自分の知らない間に自分の資金を勝手に投資されているのかである。そして証券会社においては(売買手数料は払うものの)国債の金利を中抜きされることもない。

本質的に考えれば銀行など要らないではないか。彼らが中抜きに対して証券会社以上にどういう価値を提供しているというのか。

結論

世間で金融のリテラシーが云々と言うからには、少なくとも国民は1ヶ月物国債などを自分で理解して買うぐらいの知識を持っても良いはずだ。だが日本政府の言うような金融教育は、そういう本当に必要な教育ではなく、プロは絶対に買わないような、銀行や証券会社が手数料で儲けるために設計された投資信託のようなものを盲目的に買わせるという教育である。

更に言えば、日本は政府だけではなく証券業界もどうしようもないので、個人投資家が債券を自由に売買できるような証券口座がほとんど存在していない。

こういう状況を誰も疑問に思わないのだから、日本では金融庁にも金融業界にもまともな見識を持った人間がいないのである。それでつみたてNISAのようなものが流行ることになる。

ちなみにつみたてNISAは既に詰んでいる。まさにつみたてである。