サマーズ氏: アメリカが利下げに追い込まれる可能性は低い

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が、BloombergのインタビューでFed(連邦準備制度)の金融政策について語っている。

インフレと利上げ

サマーズ氏のコメントに入る前にここまでの状況を復習しておこう。

アメリカはインフレ抑制のための利上げを続けている。シリコンバレー銀行の破綻などの銀行危機を受けて3月の会合で利上げを停止するのではないかとの見方もあったが、結局0.25%の利上げが行われた。

アメリカの政策金利は次のようになっている。(インフレ率のグラフと並べている。)

2021年のインフレ率上昇に比べて利上げは明らかに出遅れたものの、インフレ率と政策金利はようやく同じような水準に収束しつつある。

政策金利の最終的な水準には議論があるが、パウエル議長の言い分では政策金利は5%付近まで上げたあと、インフレ抑制のため長らくその水準に保たれるとのことだった。

アメリカの利下げ転換

だが筆者には1年も2年も金利をこの高水準に保って株式市場やアメリカ経済が無事でいられるとは思えなかった。しかし筆者がアメリカの利下げに賭けるトレードを開始した去年末には、市場はパウエル氏の言い分をある程度信じていた。

だが筆者にはそのシナリオは有り得ないものだった。金利を高く保っていれば、時間差で実体経済にどんどん歪みが生じてゆく。リーマンショックを予想したジョン・ポールソン氏も同じことを言っていた。

そしてついにシリコンバレー銀行が破綻した。アメリカ史上で2番目の規模の銀行破綻となった。

そしてそれまではアメリカ経済に強気だった金融市場が途端に弱気になり始めた。いつものことだがMr.マーケットは気が変わりやすい。

今後の政策金利の動向を織り込んで推移する2年物国債の金利は予想通り急降下し、去年末からの筆者のトレードは利益を出している。

アメリカの利下げ転換

市場が金利低下を織り込み始めたわけである。だがサマーズ氏は警戒しながら次のように述べている。

2つの可能性がある。1つはFedが現在の想定よりも大きく引き締めなければならなくなる可能性、もう1つは現在想定されている引き締めがすべて必要となるわけではなくなる可能性だ。

だが2年物国債金利の急低下はもっと別のことを示唆している。Fedの利下げである。

金利先物市場の現在の織り込みによると、Fedはまず次の5月の会合で利上げを停止し、6月は政策金利をそのまま維持、7月には0.25%の利下げを行うという予想になっている。

夏までにはアメリカ経済に何らかの支障が出、Fedは利下げを強いられるという織り込みである。

これについてサマーズ氏はこう述べている。

発表されているFedの想定が、Fedがもうすぐ利下げを強いられるという市場の予想よりも幾分正しいだろうというのがわたしのメインシナリオだ。

結論

さて、どうなるだろうか。読者はどう思うだろうか。筆者の予想は、利下げが7月になるかどうかは分からないが、今年の後半にはアメリカ経済の落ち込みと株式市場の惨状が誰の目にも明らかになっているだろうというものだ。

金利が高い限りシリコンバレー銀行のような危機は何度でも起き続ける。シリコンバレー銀行の破綻理由を決算書を読んで理解している投資家なら誰でも分かるはずである。