物言う投資家として有名なカール・アイカーン氏がシリコンバレー銀行の破綻と今後の株式市場の動向予想についてFox Newsのインタビューで語っている。
世界的な銀行危機
今月は激動の月となっている。アメリカではシリコンバレー銀行とシグニチャー銀行が立て続けに潰れ、そしてヨーロッパではクレディスイスがついにUBSに救済買収された。
アイカーン氏はこうした銀行危機について警戒しているかと聞かれ、次のように答えている。
ある程度は警戒するが、そもそもわたしは去年から1年半ほど経済全体について警戒し続けている。
シリコンバレー銀行のような銀行危機はそもそも想定しているべきことだろう。
多くの人には何故そうなのかが分からないかもしれないが、ここの読者には彼の答えは当たり前の模範解答のように聞こえるだろう。
理由については、筆者がもう一度説明しても良いが、アイカーン氏に語ってもらおう。彼は次のように説明している。
経済に資金が流入し過ぎている。パウエル議長はその点において正しい。
紙幣をばら撒いたらインフレになるに決まっている。
パウエル氏がそれを止めようとしているのは正しい。だがそれをした時には…。
彼は明らかにコロナ後の現金給付について語っているのである。
インフレと金融引き締め
当たり前だが、ここで紹介する著名投資家にはインフレがウクライナ情勢のせいだと思っている人は居ない。巷でも流石にそういう出鱈目は少なくなってきた。以下のように原油価格もウクライナ前より格段に下がってきているのに、インフレは収まっていないからである。
ロシアのウクライナ侵攻は2022年2月末である。インフレがいつから始まっているのかもう一度確認してみると良い。金融メディアでさえ原油価格チャートも見ずに記事を書くのだから、彼らは仕事を辞めれば良いと思う。
原油価格を含めすべての価格は2020年から上がり始めたのであり、当時ここではそれについて報じておいた。
その原因は現金給付である。それはコロナ危機で本来下がるはずの株価を上昇させ、本来倒産するはずのゾンビ企業を大量にのさばらせた。
シリコンバレー銀行がゾンビ企業だとは言わない。だがシリコンバレー銀行はシリコンバレーの赤字ハイテク企業という大量のゾンビ企業を預金者として抱えていた。
だが紙幣ばら撒きの当然の結果として物価が高騰した。そうすれば金融緩和を止め、強烈な金融引き締めでインフレを抑制しなければならなくなる。
そうすればゾンビ企業は苦境に陥る。ゾンビ企業の取引先も苦境に陥る。すべてはインフレ政策がやったことである。
アイカーン氏は次のように述べている。
景気が良い時には大波がすべての舟を持ち上げる。
しかし波は上がれば落ちなければならない。この比喩はまさに経済のサイクルにふさわしい。彼は次のように続ける。
だが状況が悪くなって引き潮になれば、誰が裸で泳いでいたのかが明らかになる。
シリコンバレー銀行は、裸で泳いでいた人間の隣に居たので一緒に捕まったのだろうか。詳しくは以下の説明記事を読んでもらいたい。
銀行危機と株価予想
だがコロナ後の現金給付の海を裸で泳いでいたのはシリコンバレー銀行周辺の企業だけではないはずだ。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏もそう言っていた。
そしてアイカーン氏もそれに同意らしい。彼は次のように述べている。
こうした危機の終わりはまだ起こっていない。
S&P 500の株価収益率が15まで落ち込むより前に終了した弱気相場はない。だが株価収益率は15に下がるまでにまだまだ大きな距離がある。
ここの読者には釈迦に説法かもしれないが、株価は以下の式で計算される。
- 株価 = 1株当たり純利益 x 株価収益率
現在のS&P 500の株価収益率は21である。だからそれが15までおよそ30%落ち込むとすれば、株価も同じだけ下落しなければならない。アイカーン氏は次のように続ける。
だが人々がこれから弱気になればそこまで行かなければならないだろう。
結論
S&P 500が現在の水準から30%下落するとすれば、以下のチャートは2,000ドル台後半まで下落することになる。
結構な下落幅である。天井からの下落幅は50%に近づくことになり、1970年代のインフレによる株価暴落と同じ規模の下落相場になるだろう。
そうなれば金融市場の他の部分はどうなるか。言うまでもなく、金利低下とドル安になる。
2022年に株安とコモディティ価格上昇に賭けて大きな利益を上げた時と同様、筆者のポートフォリオは2023年の相場に向けて完全に準備が出来ている。
ちなみに株価収益率15倍については、去年亡くなったスコット・マイナード氏が年末に言及していた水準でもある。そちらも参考にしてもらいたい。