インフレと金利上昇予想を当て続けているCredit Suisseのゾルタン・ポジャール氏が、The Ore GroupのインタビューでアメリカのインフレとFed(連邦準備制度)の利上げについて語っている。
アメリカのインフレの現状
ポジャール氏はまずインフレの内訳について以下のように説明している。
インフレには3つの要素がある。最初はインフレ全体の数字で、食料とエネルギーに大きく影響される。
次は財だ。財のインフレは変動がとても激しい。いくつかの要素は上がり、いくつかの要素は下がる。
最後はサービスだ。そしてサービスのインフレは賃金に大きく影響される。
現在、アメリカではインフレ全体の数字は減速している。グラフは次のようになっている。
サービスと賃金のインフレ
だが今アメリカで問題となっているのはサービスのインフレだ。Fed(連邦準備制度)の金融引き締めで原油価格は下落した。それがインフレ全体の数字を大きく減速させた。
だが中央銀行のもたらした高金利の影響をもっとも受けにくいのがサービスのインフレである。何故ならばサービス業の主な経費は賃金であり、企業は借入金で設備投資を行う(金利がコストになる)ことはあっても、借入金で従業員を雇うことはあまりないだろうからだ。
だから中央銀行が利上げでサービスのインフレを抑えようとしても上手く行っていない。ポジャール氏は次のように述べている。
賃金のインフレは問題を抱えている。労働市場は崖から落ちていない。失業率は記録的な低水準だ。
賃金上昇率は4%か5%で、高い水準を維持している。サービスのインフレを決める賃金が4%か5%で推移している。それは中央銀行のインフレ目標を大幅に上回っている。
賃金インフレを止めようと思えば高金利で借入金を減らすのではなく、経済全体を冷やす必要がある。それがインフレ退治の一番難しいところである。
ポジャール氏は現在のインフレ状況について次のように纏めている。
食品とエネルギーのインフレは不確実性が多く、リスクはデフレよりもインフレの側に多い。そして労働市場は歴史的水準まで逼迫している。
インフレとインフレ期待にとって重要なのはそれだけだ。
原油価格は今のところ金融引き締めで下落しているが、ここ数ヶ月は横ばいが続いている。
ポジャール氏は長期的には原油市場に高騰リスクのあることを以前警告していた。
こうした状況を受け、ポジャール氏はFedの利上げについて次のように語っている。
こうした状況にFedが金利をより高く上げ、市場の予想よりも長くそこに保つことに疑いはないだろう。
結論
アメリカの政策金利は現在4.5%であり、市場は5%台後半まで上がることを予想しているが、ポジャール氏はこの水準を去年夏の段階で言い当てた天才である。
その彼が金利はまだ上がると言っている。
一方で、サービスのインフレも前月比年率で見れば頭打ちの気配が見られる。
また、著名投資家のジョン・ポールソン氏は高金利が経済にもたらす悪影響にはラグがあることを指摘しており、2023年にはそれが表出することが予想される。
インフレはどうなるだろうか。アメリカのインフレは最終局面だが、日本では未だに政府が全国旅行支援などの馬鹿げたインフレ政策を続けており、アメリカでは必死に抑えようとしている賃金インフレを経団連への圧力を通して引き起こそうとしている。
何故彼らがそれほどまでにインフレにこだわるのかについては既に記事にしておいたので、そちらを参考にしてほしい。