金価格高騰予想のポールソン氏、短期的にはゴールド下落を予想

引き続き、リーマンショック時にサブプライムローンを空売りして利益を上げたことで有名なジョン・ポールソン氏の、アラン・エルカン氏によるインタビューである。

今回は金相場の短期予想について語っている部分を紹介する。

ポールソン氏の2023年相場予想

ポールソン氏はこの長編インタビューで2023年の様々なテーマについて語っている。

アメリカのインフレについては専門家の間でも様々な意見が出ているが、ポールソン氏の立場はインフレは根強く高金利は長く続くというものである。

そして彼の予想によれば、それは景気後退を引き起こして株価を下落させる。

この見通しの中で金相場を考えるとどうなるだろうか。ゴールドは一般には安全資産と言われているが、実は株価下落の時にはゴールドも下落する。リーマンショックの時の事例を参照してもらいたい。

だが以下の記事で報じたように、ポールソン氏は金価格の上昇を予想している。

ポールソン氏の金相場予想

これをどう折り合わせるか。今回は金価格の推移について彼がより詳しく語っている部分を取り上げよう。彼は次のように言っている。

ゴールドは1年後には今より高くなっているだろうが、6ヶ月後について言えば下がっている可能性もある。

つまり、金価格は短期的には下がる可能性があるが長期的には上がってゆくというのがポールソン氏の予想である。

米国株のチャートを見てみよう。ポールソン氏はこのチャートが2023年において下落してゆくと予想している。

株式市場が下落する場合、リスクオフでゴールドも売られる可能性が高い。ポールソン氏は高金利継続を予想しているから、2023年は金利の付かないゴールドには尚更不利な相場となる。ドルを持っていれば金利が付くからである。

では直近の金相場がどうなっているかと言えば、次のようになっている。

何回かにわたって解説し続けているこのポールソン氏の長編インタビューは2月前半に収録されたものだから、最近の金価格下落でポールソン氏の予想は既にある程度当たっていると言えるだろう。

実はこの予想は筆者のものとまったく同じである。筆者は10月の底値でゴールドを買った後、12月にポールソン氏の主張とまったく同じ理由で利益確定している。

だがそれでも年明けの記事には次のように書いておいた。

ゴールドといえどもコモディティであるため、景気後退懸念(厳密にはそれに伴うデフレ)は悪材料となる。

だがゴールドはもう2年も横ばいになっていることも考えれば、2023年内もそれほど下がらないが、下がるとしても2022年の底値近辺までではないか。

金相場は大体こうした予想に沿って動いていると言えるだろう。

長期では金価格高騰へ

だがそれは今年の半ば辺りまでの話である。そして長期となれば話はまったく違う。ポールソン氏は次のように述べている。

わたしはドルは下落すると考えている。

そしてドルの下落は、ドル建てでの金価格上昇を意味する。

アメリカは大規模なインフレに見舞われた。そしてインフレとは貨幣価値の下落を意味するにもかかわらず、ドルは金利上昇に反応してむしろ上がってきた。

だが「インフレでドル上昇」はほとんど自己矛盾であり、この矛盾はいずれ解消されなければならない。

いつ解消されるかと言えば、インフレが収まって金利が下がり始めるときである。その時ドルはインフレで価値が下落した分、そしてそれにもかかわらず上がっていた分だけ大きく滑り落ちなければならないのである。

このことについてはスタンレー・ドラッケンミラー氏がいち早く予想していた。

そしてドルから資金が流出する時、真っ先に資金が流入するのはゴールドである。

ポールソン氏は次のように纏めている。

1ヶ月や2ヶ月先のことは分からないが、1年や3年や5年先のことを考えれば、資産の保全先としてはドルよりもゴールドの方が良いだろう。